アニメ版『リングにかけろ1』の影道編と世界大会編は、無印・日米決戦編の続編として視聴すると落第点しかあげられない。

 原作『リングにかけろ』は、登場するボクサーの強さがが徐々にインフレ化し、人智を越えた強さになっていった作品であった。
 一方アニメ版は最初から人智を越えた強さであった。必殺技の演出は過剰な程であり、その威力も凄まじいものであった。
 全十二話という長い尺を満たすために原作より延ばされた戦いでは、原作より強化されたパンチを互いに受け合いながら、主要キャラ達は死ぬ事もなく戦い続けていた。
 しかもやがて世界大会で登場する強敵達の様子も先行して登場し、既に人智を越えていた主要キャラをさらに凌ぐ実力を見せびらかしていた。
 例えば後にフランス代表チームの大将になるボクサーは、負傷中の腕をさっと振っただけで目の前の森の木が真空の刃で全部切り倒されていた。「こんな奴に、勝てるわけがない!」と思わされる光景であった。
 第二シーズンである日米決戦編が始まってもその方針は変わらず、中学生同士のボクシングでありながら、聖闘士星矢を視聴しているかの様な気分にさせられたものである。
 ただし敵チームの副将だけは原作と同じ程度の弱さであった。後にして思えば既にこの時点で原作尊重の風潮の萌芽があったのであろう。
 第三シーズンは影道編である。敵の数は日米決戦編より多い筈なのに、話数は一気に半分になった。途端に話の速度が原作と同じ程度になり、主人公達の強さも原作程度までデフレ化してしまった。そしてそれ以上に敵もデフレ化した。
 強敵の後に弱い敵が出てきても、それは別におかしな事ではない。ただしアニメの影道は日米決戦を偵察していたので、アメリカチーム以下の実力で主人公達に挑んだ姿勢が、実に身の程知らずに感じられた。
 そして世界大会編である。これも僅か六話である。ほぼ原作通り、敵チームはサクサクと壊滅していく。原作至上主義者には嬉しかったかもしれないし、もし私がこのシーズンだけを視聴したならば名作だと思ったかもしれない。
 しかし、第一シーズンから延々と主人公達を偵察・研究していた設定のドイツチームがあっけなく原作通りに滅んだのは実に残念であったし、腕が完治した筈のフランスの大将の技の威力が却って弱まっていたのは見ていて痛々しかった。
 そういうわけでアニメ版の影道編と世界大会編は、無印と日米決戦編を完全に無視した別世界になってしまっていたので、実に残念に思えたのである。

リングにかけろ1 DVD BOX

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リングにかけろ1 影道編1 [DVD]

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