さくまあきら監修『新桃太郎伝説究極本』(KKベストセラーズ・1994)

新桃太郎伝説究極本 (BESTゲーム攻略SERIES)

新桃太郎伝説究極本 (BESTゲーム攻略SERIES)

評価 知識2 論理1 品性2 文章力2 独創性1 個人的共感2
 スーパーファミコン用ソフト『新桃太郎伝説』(ハドソン・1993)の解説書である。
 本書の目玉と言うべき「新桃太郎伝説びっくりひみつ」は、コラムをちょうど100個にするため、無理に一つの話題を二つに分けていたり、特に秘密とは言えない様な話題が加えられていたりする。また153ページからの敵キャラ完全紹介やハドソン公式ガイドブック『新桃太郎伝説』(小学館・1994)と被っている情報も多い。
 以下、個別の問題点を指摘していく。
 11ページ、料亭い志ゐで「すし」を食べた時に聞ける情報と「フグ料理」を食べた時に聞ける情報とが、文章では完全に入れ替わっている。なお、写真だけは正確に配置されている。
 19ページ、ゲーム中で掛軸が掛かっている場所が「といちや」と稲妻仙人の庵だけであるかの様に書かれている。しかし実際にはほうひ仙人の家等、掛軸のある場所は他にも存在する。
 23ページでは希望の都に蔵が三棟しかない事になっているが、実際にはもっと多く、蜂乃屋の傍に四棟、料亭い志ゐの傍に二棟の、計六棟である。
 24ページのおによけ仙人の修行の攻略法については、本文や左下の表では不可抗力的失敗があるのを認めているのに対し、右上の写真に付された解説ではあたかも攻略法が絶対成功するかの様な表現がされている。
 39ページ、通常攻撃によるダメージに対して二倍のダメージを返してくる「かね童子」について、「術でしか倒せないだろう。」という見解が述べられているが、通常攻撃で倒すことは決して不可能ではない。特に倒した際の通常攻撃には反撃が来ない。また仮に通常攻撃を避けるにしても、道具で倒すという第三の選択肢が思い浮かばなかったのは残念である。
 50ページ、苦手な天気の場合について「術の消費技数も2倍。そして、毎ターン最大体力の10%ぶん体力がへっていく。」とあるが、実際には消費技数は1.5倍であり、体力減少率は5%である。
 51ページ、日照りになると動けなくなるキャラクターが金太郎・夜叉姫・寝太郎・でか太郎の四人とされている。実際に動けなくなるのは金太郎・寝太郎・でか太郎の三人だけである。
 53ページは空中にいるために攻撃が当たりにくい敵の紹介である。「空を飛んでいる敵は次の5種族」とされ、「カラス系」・「もま系」・「天狗系」・「ぬえ系」・「えんばは系」が紹介されている。しかし実際には白蓮系・ガシャ系・コウモリ系・もうりょう系・鬼船系・ふゆう仙人にも、攻撃は当たりにくいのである。また、本文では天狗系で飛んでいるのは「カラス天狗」と「木の葉天狗」だけであるとわざわざ解説しているのに、写真には「大天狗」が使われている。
 58ページの「玄武の刀」に関する解説では、「玄武の刀の攻撃力は+50ポイント。大江山付近で1番強い『鎖切りの刀』より強力だ。」とある。しかし大江山の頂上にある「すずめのお宿3」の兵具屋では+53ポイントの攻撃力を持つ「釜割りの刀」が売られている。
 63ページでは「つりざお」で釣れる魚の一覧表が69ページにあるとされているが、実際にはこの一覧表は67ページにある。
 66ページの仙豆のコラムは最悪級である。まず最大体力を多い時には4上げる筈の「命の仙豆」の効果が、常に1しか上げない事になっている。右下の「仙豆とその効用」の表では、命の仙豆の体力回復や「技の仙豆」・「禁断の仙豆」の技回復といった副次的効果が省略されている。中央の写真に付された解説では技の仙豆が推奨されているが、68ページにある通り、技の仙豆を買うぐらいなら「虎信」を買った方が余程得である。左下の写真に付された解説には「3つの仙豆屋を合わせて、仙豆は144個の在庫がある。」とあるが、実際には一つの店舗で売り切れた仙豆は他の店舗でも売り切れとなっているので、在庫は48個である。
 69ページでは「ダイコン」をおともに食べさせると5/16の確率で「どうぶつの友」の効果があるとされている。しかし実際には、ダイコンの場合はどうぶつの友の場合とは異なり、どの能力値を上げるかの選択権はプレイヤーに無い。
 70ページの鬼の軍用アイテム解説のコラムは、これといって攻略に役立つ真新しい情報も無く、「鬼の涙」や「鬼のかくらん」が省略されている等、そもそも内容面で劣悪である。その上、「伝令がみにつけたりする」という部分の直後にあるべき句点が消えている。
 76ページ前半、本文では「右の画面写真を見れば分かるように、確かにふういんの術の効果があらわれている。」と書かれているが、右の写真の内容は民家で寝太郎がシャボン玉を手に入れる場面である。
 そもそもシャボン玉とは、「説明」を選ぶと「戦いで つかうと 鬼の(原文改行) 術攻撃を ふうじます!(原文改行) 〈1回きり!〉」と表示されるのに、実際に戦闘中に「つかう」を選ぶと「シャボン玉は(原文改行) つかえません!」と表示されるという、有名なバグアイテムなのである。これを正直かつ自虐的に紹介してこそ、文章は面白くなる筈だったのである。
 同ページ後半で、本文でも表でも「からくり玉」と「ギヤマンの玉」の変身のパターンがそれぞれ八種類とされている。ところが表にある八つのアイテムの確率を合計しても、どちらも54/64にしかならない。本文でも、からくり玉の解説では表に無い「竹の水筒」の話題が登場し、ギヤマンの玉の解説でも表に無い「山嵐の玉」や「人気の仙豆」が登場し、総論的部分でも表に無い「愛のようかん」や「半河沙の玉」の話題が書かれている。
 82ページでは、獏に呼び出された天賊鬼の対策として、かつてボス戦で戦った時に有効だった「小波の術」を使わせる戦術を推奨している。しかし最初に天賊鬼に出会った時は一対一の戦いだったものの、月で獏に会う頃には仲間がいる場合がほとんどであるので、ここで全体攻撃である小波の術を使わせるのは得策とは言えない。桃太郎側の攻撃力も格段に高まっているため、何度も通常攻撃を受け続ける心配も無いので、月では天賊鬼に「ばいりきの術」を誘発させるのが正攻法である。
 84ページで紹介されているゲームの鬼の数多くの台詞は、おそらく開発段階のものと思われる。
 87ページでは「鬼の呪い」が「鬼の祝」と誤記されている。
 93ページでは「腕が抜ける」とすべき記述が「腰が抜ける」と誤記されている。
 同ページ、黒河童の「くすぐる」攻撃の説明に「『生臭いにおい』『大声を出す』の2つの極意を合わせた複合技。」とある。だが、くすぐりの効果は守備力の低下と術の封印であるのに対し、生臭いにおいの効果は攻撃力の低下である。守備力を低下させる黒河童の特技は「水中に引きずり込む」である。
 94ページの「梅攻撃」の解説に「残りの4/16は普通の通常攻撃」という表現がある。「通常攻撃」に「普通の」と付けるのは同義反復である。また本書の梅攻撃の解説では雨攻撃が忘れられているので、この記述以前に紹介された種々の梅攻撃の確率を合計しても10/16にしかならない。
 逆に95ページの「特攻撃」では、諸確率を合計すると17/16になってしまう。
 98ページには「味方全員にみなせんたん。」という表現がある。しかしみなせんたんは元々からして味方全員に効果がある術である。
 101ページの天邪鬼が要求してくる六つのアイテムに関する解説は、最後の一個の特殊性を説明出来ていない。
 103ページのキングボンビーについての解説は、雷雨が得意になるという長所だけを書いており、術が使えなくなるという短所が書かれていない。
 106ページでは「仲間編」と書くべき二箇所が両方とも「イベント編」になっている。
 110ページでは「小乗仏教」という蔑称が平気で使われている。
 136ページでは「豊かの村」が「豊の村」と誤記されている。
 最後に一点だけ賞賛しておく。大量に収録された絵は、どれも文と比べ物にならない程丁寧に描かれている。これを目当てに買うのなら良いだろう。