昔、『ペリーヌ物語』という題名の連続アニメーションの後半部分を再放送か何かで観た。それなりに面白かった記憶があるのだが、何が何でも再会したいという程のファンではなかったので、ネットに触れた後も特に検索するでもなく、ほとんど忘れかけていた。
最近、図書館で偶然手に取った岩波文庫『家なき娘』の内容がペリーヌ物語の原作だったので驚いた。
原題は『En famille』なので、「家なき娘」では逆の意味になってしまう。だがその内容は、作者を同じくする兄妹作とでも言うべき『Sans famille』(『家なき子』)の「1.家族を失う。」→「2.どん底の放浪。」→「3.才覚で台頭。」→「4.富豪の後継者の地位を巡る争いに勝利。」という流れとほぼ同じだったので、読み終える頃には邦題への不満はほぼ消えていた。
初期資本主義の権化の様な工場が、ペリーヌによって福利厚生の充実した工場へと変質していく過程が面白かった。
ペリーヌの母が、インド系イギリス人で、しかも奉じる宗教はヒンドゥー教でも英国国教でもなくカトリック教であるという、複雑な事情も知った。
翻訳は、貨幣の単位が原則として原作のままであるのに、偶に「何百萬圓もかけて」(上巻129ページ)といった表現も併用されているのが、残念であった。
上下二巻であり、どちらも第一刷は西暦1941年である。私が手にしたのは2000年に刷られたものであり、なんとまだ第三刷であった。こんなに面白い本が長年改訂も改訳もされずにほとんど刷られもしなかった事に驚いた。
こうした事情により、「時代性を考慮して云々」等の但し書きも無しに、「片輪にならうとしてゐるのだ。」(下巻7ページ)といった表現が平気で登場している。
これには、同じく岩波から出た宮崎市定著/礪波護編『東風西雅 抄』(2001)に大東亜戦争は六割方日本の方が正しかったという主張の文章が掲載されていたのを見つけた時以上に驚かされた。
どちらも、中身を読んだ上での英断ならば、大変素晴らしい。
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