物流で読み解く、ポルトガ王の真意

 『ドラゴンクエスト3』では、世界中のほぼ全ての都市で武器・防具の値段・品質が同じである。
 アリアハンによる世界統治は既に過去のものであるし、アッサラームで独自の詐欺的な商売を行っている二人の商人が処罰を免れている事から考えるに、これは権力によって強制された結果とは思えない。
 理論的には、輸送費用が無く、貿易障壁が無く、完全競争で、独占的に差別価格を付ける企業がいなければ、一物一価の法則(Law of one price)が成立すると、一般に言われている。
 よってこうした状況を成立させている理由としては、キメラのつばさによって輸送コストが限りなく零に近くなり、世界中の商圏が統一されているという事が、考えられる。
 ランシールの一住民が、遠くエジンベア城における上層部と門衛との間の意識の齟齬まで知っていたのであるから、キメラのつばさによる人間の移動がかなり活発である事は確かであろう。
 さてそうなると不思議なのは、バハラタ名産のくろこしょうと大航海に耐え得る船舶とを交換したポルトガ王の真意である。
 第一の仮説として、「バハラタを訪れた経験のある人物が当時の外部世界に一人も残っていなかった。」という説が浮上した。バハラタには高額な商品を売る武器屋は存在しない。孤立系である事は十分に考えられる。
 しかしスーパーファミコン版ではバハラタにも武器屋があるらしいので、これはスーパーファミコン版をも包括的に説明出来る説とは言えないという結論に至った。
 ここでふと思い出したのが、主人公達がポルトガ王に提供したくろこしょうの量は、多めに見積もっても一人の人間が持ち運べる分量の僅か八分の一であるにも係わらず、ポルトガ王は一度でもくろこしょうを提供された後は、何昼夜経過してもこしょうを食べ続けているという事である。
 そしてもう一つ、ポルトガのある店がこしょうを置いてない理由として値段のみを挙げていた事を、思い出した。
 おそらくカンダタバハラタ方面を荒らし始めるまでは、くろこしょうは普通にポルトガにも輸入されていたのであろう。そして事件解決後は、恒常的な輸入が再開されたのであろう。
 ポルトガ王はバラモスを倒せるかもしれない人材に支援をしたかったのであろう。しかし自称勇者全てに支援をしていては、財政が破綻してしまう。そこで試練を課して選別していたのであろう。勿論当初から欲していたのは、ヒートギズモやデスジャッカルを退けてバハラタまで何とか往復出来るという程度の人材ではなく、バハラタカンダタの脅威から救える程度の人材である。

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