ファミコン版ドラゴンクエスト初期三部作における死と再生

 ファミコン版『ドラゴンクエスト3』を遊び始めた頃、偽サマンオサ王に処刑された男性の妻の態度が奇妙に思えた。このゲームでは死後何日も経過した死体ですら多少の金さえ積めば教会で復活させてもらえるというのに、彼女は真のサマンオサ王が復権した後も夫を蘇らせようとはせず、夫も成仏出来るだの何だのと言うだけであった。他に好きな男でもいたのかと、長年疑ってしまっていた。
 しかしある日、それを言うならば、くさったしたいザオリクで人間に戻してやらない勇者達もまた非人道的であるという事に気付いた。更に言えば、グリーンオーブの囚人・エリック・サイモン・ネクロゴンド王等も主人公達に見殺しにされている。
 そこで、ゾンビマスターにくさったしたいを呼ばせ、次にくさったしたいを殺し、最後にゾンビマスターがくさったしたいザオラルを使うのを待つ、という実験を行った。結果、くさったしたいくさったしたいとして蘇った(?)。
 こうして、少なくとも生前と同じ存在としては復活出来ない類型の死体というものが存在する事が判明した。二度と復活出来ないようにはらわたを食い尽くすというバラモスの宣言も、単なる脅しではなかった事になる。
 バラモスがバラモスゾンビとしてしか復活出来なかったのも、救助が遅れたからであろう。あるいは自分の宣言にヒントを得た勇者によって臓器まで丁寧に破壊されたという可能性もある。やまたのおろちが復活出来なかったのも、人間側のホームグラウンドとも言うべき一国の中央政庁の内部で死んだせいで死体が処理されてしまったからであると思われる。
 一方、ファミコン版の初期三部作では、近所にあくましんかんやアークマージが生息する地域で死んだアトラス・バズズ・ベリアル・ハーゴン(!)・キングヒドラバラモスブロスバラモスゾンビは、同じ姿と力量での復活に何度でも成功している。
 これにより、主人公達が死ぬと入れられる棺が、実は極端に防腐機能に優れた魔法の棺であった事が判る。あれだけ大きなものが、普段運ぶのに邪魔な「どうぐ」の一つとして認識されず、生存者一名と棺三つの状態になっても生存者四名の時と行進の速度が全く変わらないのも、魔法という事で理解出来る。

 そして更にこの魔法の棺の存在から、「何故ドラゴンクエスト初期三部作の主人公は、一度に行動する仲間の数を制限したのか?」という謎への合理的な説明も可能となる。
 おそらく、量産不能な手持ちの魔法の棺の数を考慮し、有力メンバーがアンデッドモンスター化して敵になるというリスクを避けたのであろう。
 ルーラやキメラのつばさが巨大な船まで運んでいる事を無視した「ルーラやキメラのつばさで運べる人間の数に限界があるから。」説よりも、この説の方が優れていると思う。
 
 さてここで、ドラゴンクエストの主人公達は、何故全滅してもはらわたを絶対に食われずに安全地帯に戻ってこられるのか?」という疑問が出てくる。
 私は、「ふっかつのじゅもん」という用語にその回答を見出した。
 ゲームプレイヤーにとってふっかつのじゅもんがデータ復活のための文字の羅列であるという事は、確認するまでもない。しかしこれだけでは、ゲーム中でもこの文字の羅列が「ふっかつのじゅもん」と呼ばれていた事を説明する事までは出来ない。
 『ドラゴンクエスト2』では、全滅時には「ふっかつのじゅもん」を最後に聞いた地点に戻される。ファミコン版の2では、ルーラも場所を選べず、ふっかつのじゅもんを最後に聞いた地点の近辺にしか行けない仕組みになっている。ルーラでラダトームにしか行けない1も、これとほぼ同じ仕組みと見做せる。
 以上によりふっかつのじゅもんとは、全滅時にザオリクリレミト・ルーラに類似した機能が一度に発動する呪文であると思われる。そして3でも、諸王により類似の呪文が唱えられていると思われる。
 アリアハン王やラダトーム王がこの仕事を放棄した際には、大臣や宗教家が代行を務めているので、これは修行ではなく秘伝を読む事によって習得出来る呪文であると思われる。この世界の王権の基盤である可能性すらあるだろう。
 ピラミッド地下及びロトの洞窟という呪文が使えない場所で全滅しても戻れるのは一見すると不思議かもしれないが、地上で使ったレムオルの効果が持続している事や、呪文と同じ効果の道具は普通に使える事から、これ等二箇所は単に現地で唱えた呪文のみを無効化する機能しか持ってはいないのだと思われる。
 ともかくこれで、全滅しても確実に助かる代償に持ち金が半分になる事の合理的説明がつく。全滅時の復活の代償は手持ち金の半分というのが世界的な契約の相場なのであろう。
 なお、一部で唱えられている「モンスターに奪われるから。」説では、モンスターが道具や内臓には手を出さない理由が不明であるし、常に偶然にも半額奪われる事の説明もつかない。
 してみると、有力な産業を持たないエジンベアの王は、狂信的国粋主義を鼓吹して下級兵士を纏めつつも、収入のためには外国の有力な冒険者とも契約を結ばなければならないという、困難な立場にある事になる。そしてこの王は遠い大陸の事情にも詳しい大臣に王位を狙われてもいるのである。
 
 なお、やみのせかいを割譲した直後にりゅうおうが唱えた偽のふっかつのじゅもんの正体は、まだ納得のいく結論に辿り着けない。真のふっかつのじゅもんの効果を低下させる効果のある呪文だったのかもしれないとも思うが、今後も考察を進めたい。

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