私に牙狼<GARO>を貸してくれた古参ファンから、各回の個別の感想だけで終わらせずに総括的文章も書いて欲しいと言われたので、私が発見した仏教からの影響について書いてみる。
釈迦は苦痛という結果が生じるまでの「因果(いんが)」関係を明らかにしたとされている。それを説いた「縁起」の最後に配置される「老死」とは、一般に実際には「苦」を意味しているとされる。欲望や執着心といった原因の結果として苦痛があるという訳だ。そして総じて仏教は、欲望を制御しないがためにこの因果により苦しんでいる状態から解放され涅槃に至る事を目指す。少々御節介な話だが、大乗仏教は他者をも因果から解き放とうとする。
牙狼<GARO>世界の重要なキーワードの一つに「陰我(いんが)」というものがある。これは物語の悪役「ホラー」が登場する原因である。ホラーは邪心のある人間に憑依し、憑依された人間の欲望をも原則として満たしつつ、自己の食欲も満たす。ただ憑依されると非常に苦しいという事が、第二十一話で明らかになる。そして魔戒騎士は、ホラーに憑依された者の陰我を断ち切って苦痛から解放する役割を果たしている。
こう比較すると、「陰我」という用語が仏教語としての「因果」の影響を受けている事は明らかである。また魔戒騎士とは仏教に例えるならば密教の明王の様な存在であると言える。
続いてアングリマーラという仏弟子の話をしたい。彼は仏教に帰依する前、バラモン教の師匠に騙されて人を千人殺そうとした人物である。最後の標的は自分の母親だったとも言われている。最終的には仏教に帰依する。
この仏弟子の伝説は、バラゴの設定に多大な影響を与えたと思われる。まず、彼は「メシア」という宗教色の強い名前のホラーに騙されて千体のホラーを食べようとしていた。これはアングリマーラがバラモン僧に騙された故事に通じる。また『暗黒騎士鎧伝』では、母親の幻を斬る事でバラゴからキバへと進化していた。これはアングリマーラの最後の標的が母親だった事に対応している。小説『暗黒魔戒騎士篇』では、最後の最後で改心して鋼牙に力を貸していた。これはアングリマーラの出家に対応している。
その他、メシアのデザイン・立場は弥勒のイメージの影響が強いし、『RED REQUIEM』の強敵の名も「カルマ」である等、要所要所に仏教の影響が見られる。
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