小説版の牙狼<GARO>も読んだ。

暗黒魔戒騎士篇

牙狼<GARO>暗黒魔戒騎士篇 新装版

牙狼暗黒魔戒騎士篇 新装版

 映像版の裏話的な短編が多数収録されている。先に映像を押さえておくと、映像では描かれなかった背景事情や後日談を楽しめる。その意味で、この小説から牙狼の世界に入るというのは原則として推奨出来ない。
 映像版ではほとんど迷い無しに行動しているかの様に見える鋼牙も、本作ではホラーの探索に当たっては激しく思索を巡らせ続けていたりする。今後も映像版では延々と内心の迷いを独白させる場面を作る訳にはいかないだろうから、これは小説版でのみ楽しめる部門である。
 映像版では一話限りの脇役だった人物のその後の活動が深く描かれている話もあった。視聴率等の関係上、この部門も映像化が難しそうである。
 映像作品の小説版の中には、単に映像を稚拙に文字化しただけの作品や、それを機械的に避けただけの三文小説も数多いが、この作品は映像と小説という二媒体それぞれの長所を知り尽くした作者に依って書かれていると感じた。
妖赤の罠
牙狼<GARO>?妖赤の罠?

牙狼?妖赤の罠?

 今度は長編である。前作の作風を安易に踏襲せず、一つの話の中で多くの登場人物の内面を並行して描くという形を採り、しかもそれに成功している。特に己の未熟に苦しむ暁の内面は独自性が高い。
 視覚化したらさぞ素晴らしい造形だろうにと思わされるホラーも多数登場するのだが、そのデザインが挿絵等で明かされる事は無かった。これについては賛否両論がありそうである。
 本作では、「サバック」という魔戒騎士の武術大会が開かれる。出場選手は「世界中から選び抜かれた強豪たち」(114ページ)である。ただし123・124ページでは異国の魔戒騎士が日本と比較して少数である事が示唆されている。外国には日本の様な「管轄」も無いらしい。
 外国にはホラー出現のゲートが少ないのか、あるいは外国では魔戒騎士以外の何者かがホラー退治の中心なのかと、色々と仮説を立ててみた。
 394ページで「人間界に降臨した」とされる七体の使徒ホラー全てが、395ページではどこかの「管轄」にいる事が前提になっているので、これも考慮するに、最初の仮説が正しそうである。
 なお私の手元にある初版の323ページの5行目では、ほぼ確実に正しくは「アキラは心に誓った」であろう文が「バラゴは心に誓った」となっていた。