『牙狼<GARO>』全話視聴計画(白夜の魔獣・RED REQUIEM・呀<KIBA> 暗黒騎士鎧伝)

白夜の魔獣

 冒頭、たった一人の子供を救うために何故邪魔をするのかと鋼牙に本気で質問してくるホラー「エルズ」が登場する。黒の指令書以外は命令を拒絶出来る事から考えるに、ホラーを大概は見逃す様な不真面目な魔戒騎士も多数存在するのかもしれない。
 残念ながらもう二度と登場しないだろうと思っていたコダマやバラゴといった大人気のキャラクターが、無理の無い形で再登場してくれたのが良かった。視聴者の願望に実に良く応えてくれている。
 魔戒樹の中で鋼牙の母が現代魔界語(?)で発した言葉は、テレビシリーズ終盤で法則にある程度気付いていた事もあって何とか聞き取れた。一緒に観ていた古参ファンを驚かせる事が出来て少々嬉しかった。
 終盤の戦闘に継ぐ戦闘はやや冗長であったが、ホラー「レギュレイス」の最終形態の造形は見事なものであった。
 新キャラクターとして魔戒騎士の山刀翼が登場していたが、彼を含めた男性陣は失点続きで、邪美の引き立て役といった感があった。
 棒読み系の喋り方をする人物が多過ぎたのは減点要素である。いつもの様にこれが零一人ならばそれも味わい深い個性と言えるのだが、こうも揃うと雰囲気が悪くなる。『MAKAISENKI』第九話の高峯龍之介でも乱入してきて演技指導でもしてくれれば良いのに、と本気で思った。
 ラストシーンは上手に締め括っていたと思う。
RED REQUIEM
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 魔鏡ホラー「カルマ」は、自分の気配を札を使った結界で隠していた。それを知った新キャラクターの烈花はこんな事が出来るのは魔戒法師だけだから裏切り者がいるに違いないと決め付ける。そしてその予測は正しかった。してみると第四話のパズズにも魔戒法師の助力者がいたのだろうか?
 因みにカルマの声は、普段はカオルを演じている肘井美佳氏が演じている。これは単なる特別出演ではないと解釈する事も可能である。カルマは、「クルス」という男を死んだ恋人「シオン」への強い想いを利用して部下にしていた。この事から類推するに、カルマは鋼牙の精神をも読み取って、彼の攻撃が一番鈍る様な声を出していた可能性が高い。
 クルスの職業は画家。故に彼もまたカオルの分身的存在である。更にシオンはクルスの絵のモデルだった女性であり、変身すると天使の様な羽が生えるので、これまたメシア状態のカオルを思い起こさせる。
 一方烈花の設定だが、父親が冴島家と何らかの関係があった点等において、これまたカオルと似ている。最終決戦では笛の音で大量の死人を召喚してカルマ打倒に貢献しているが、これは明らかに本編の最終話のカオルを意識したものである。「視覚」芸術の代表選手である魔鏡ホラー・画家・モデル連合に対し、烈花のこの笛の音は「聴覚」芸術である。総じてカオルのライバル的存在として作られた感がある。
 故に本作は実は、鋼牙をめぐるカオルと烈花の女の戦いでもあると思われる。
 実際、中盤でクルスが鋼牙に圧勝した際、あと一押しで鋼牙を殺せるというのに、カルマはクルスに「先ずはその女を喰らうが良い。」と不可解な命令を敢えて下していた。ここでクルスの標的を変えさせたのは、最終的に食材にするにせよ部下にするにせよ、とにかく鋼牙を自分の獲物にしたいという欲望があったからであろう。
 この余計な欲望が祟ってやがて番狂わせの敗北に繋がるのであるから、まさに「カルマ(=業)」の名に相応しいホラーであった。
 それにしても、名前が仏教用語である「カルマ」の手下に、それぞれキリスト教ユダヤ教を思い起こさせる「クルス」・「シオン」がいるというのは、少々問題だ。
 まあそれでも「空海」の部下に「最澄」がいた『烈火の炎』よりはまだましかな、という擁護を、「レッカ」繋がりで書いておく。
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 時系列的には第二十三話の中盤辺りの話。
 バラゴが自分の幼き日を語るのだが、先に発表されていた小説版と内容がまるで違っている。「小説の内容が真実。本作のエピソードは本人による脚色。」と言い張れば整合が取れなくもない。
 本編で全く登場しなかった魔戒導師エルダを無理に登場させ、しかもその過去にかなりの時間を割いているので、バラゴの過去の戦いに割く時間がかなり少なくなってしまっていた。色々と面白いデザインの敵もいたので、エルダを割愛してバラゴの戦いをもっと引き延ばしていれば、かなり面白くなっていたと思うのだが・・・。
 メシアが復活直前でなくとも自在にカオルの意識を乗っ取る事が出来、しかも実際に過去にそれを行っていたという設定が明かされる。そして意識がメシア状態のカオルの格闘能力は、千体のホラーを食べ終えた状態の暗黒騎士よりも強かった。
 第四話でカオルがホラーに格闘で勝利出来たのも、このメシアの力の御陰なのかもしれない。
 ロマンチシズムには欠ける解釈になるが、第一話で鋼牙がカオルを斬らなかったのも、単なる恋の前哨ではなく、「本気で殺し合えば確実に負ける。」と、武人としての本能が囁いたからでもあるのかもしれない。
 なお、バラゴの敵として西の管轄の「風雲騎士バド」という魔戒騎士が登場する。結局はバラゴに負けてしまうのだが、「暗黒騎士」というドーピングさえ除けば、私は彼こそが最強の魔戒騎士ではないかと思っている。
 同封の冊子の11ページを読む限り、二人の最後の戦いは第23話の直前に起きたらしいのである。即ち、バラゴが既に1000体弱のホラーを食べて相当強化された状態だったのにも関わらず、ほぼ互角だった事になる。以上により、ほとんどホラーを食べていない頃でしかも未変身の状態だったバラゴとほぼ互角だった大河よりも、遥かに強かった事になる。