【新説?】唖泉の毒の正体はマラリアかもしれない。

 『三国演義』第八十九回には、四種の毒の泉が登場する。飲むと喋れなくなり数日後に死ぬ「唖泉」、沐浴すると皮と肉が溶けて骨だけになる「滅泉」、浴びると手足が黒くなって死ぬ「黒泉」、飲むと体が綿の様に柔らかくなって死ぬ「柔泉」である。
 この設定は全くの架空の産物である可能性も高いが、それなりのモデルがあった可能性もまた否定出来ない。四泉の毒の成分を類推する知的ゲームは、同人誌の記事等で稀に見かける。
 ただ私が過去に読んだ四泉の分析記事は全て、化学に基く考察であった。滅泉の成分に関しては化学で考えるのが王道中の王道であろうが、唖泉の場合は「安楽泉の水を飲むと治る」という設定もあるので、化学のみで考える事に限界がある。
 私はこの度、まずはこの安楽泉に注目してみた。
 安楽泉は唖泉のみならず、「疥癬」にも「瘴気」にも効く。そしてwikipediaの「アーテミシニン」の記事(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%82%AA%E3%82%B9)には、「ヨモギ族植物は、漢方薬として、千年以上前から皮膚病やマラリアなどさまざまな病気の治療に用いられてきた。」という文がある(最終閲覧日時は西暦2012年3月4日7時54分)。安楽泉にモデルがあるならば、こうした漢方の成分を含む泉であったと思われる。
 マラリアに効く泉の水が効く症状と言えば、やはりマラリアである。wikipediaの「マラリア」の記事(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%82%A2)によると、マラリアの合併症の「脳マラリア」は、「意識低下、言語のもつれなどの神経症状が起こる。進行すると昏睡状態に陥り、死亡する。」らしい(最終閲覧日時は西暦2012年3月4日7時54分)。これは正しく唖泉の症状である。
 してみると唖泉にモデルがあったとすれば、その泉は水自体に毒性があったのではなく、マラリア原虫を媒介する蚊の生息に適した環境だったのではなかろうか?その泉で水を飲もうとすると、相当の確率でマラリアに感染し、やがて言葉がもつれて死に至るのである。そして付近にある抗マラリア活性を有する植物成分が溶けている別の泉の水を飲めば、助かる事もあったのだろう。
 自分の見聞の範囲では全くの新説なので、一応「新説?」と題名に銘打っておいた。新説でない事が判明した時点でこれは削除する。
※医学の知識に疎いので、wikiに頼りました。しっかりした知識を持っている人からの批判・助言をお待ちしております。

三国志演義〈6〉 (ちくま文庫)

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