近世の女性天皇誕生の背後にあったかもしれない国際情勢

 以前、古代の女性天皇誕生の一因に、大陸において女性の権利の強い北朝系王朝の台頭があったという可能性を示唆する記事(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20100202/1265051131)を書いた事がある。
 そして最近、近世に久々に女性天皇が復活した背景にも、やはり当時の国際情勢が微妙に影響を与えたのではないか、と思い始めた。
 以下、明正天皇が即位した西暦1629年における日本と世界の関係を描いてみる。
 まず、しばらく前から西洋人との交流が始まり、男尊女卑色の強い明王朝の権威が絶対のものではなくなっていた。貿易面でも日明貿易は衰退し、西洋人との貿易が盛んになっていた。そして豊臣秀吉の「唐入り」により、明との友好関係は絶望的となり、また明が既に大して強くない事も日本人は知った。
 一方、西洋諸国における最強国はイスパニヤである。そのイスパニヤにおいては、イサベル一世やフアナといった女性が共同君主を務めたりもしていた。そしてその最強国の無敵艦隊を1588年に破った新興国の指導者こそ、かのエリザベス一世であった。
 後水尾天皇自身がそこまで知っていたかどうかは不明であるが、明正天皇への譲位について賛否の見解を示して影響力を行使出来る公家や幕閣及びそのブレインの中には、そうした知識を持つ者が何名かは居たであろう。これが賛成論の強化及び反対論の弱体化という形で微妙な影響を及ぼした可能性は高いと思われる。