今回は『機動戦士ガンダム』第2話の「一機のザクは、通常の三倍のスピードで接近します。」という有名な台詞に関して、しばしば見落とされがちな事を書きたいと思う。
なおこの記事はウルトラマンの最終回の台詞の解釈をめぐる俗説を批判した記事(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20121029/1351519419)の姉妹版でもある。俗念に捕らわれずに資料にしっかり耳を傾ける事が必要なのは、何も歴史学や文学等の学問に限った事ではない。
この有名な台詞が論じられる際に一番忘れられがちなのは、「スレンダーの通常のザクも、シャアのザクとほぼ同じスピードでホワイトベースに迫っている」という事実である。
マーカーがこの有名な台詞を吐く直前、天井のモニターはホワイトベースに迫る二つの物体を映しており、その速度はほぼ同じである。その二機の速度を見たオスカは慌てて「このスピードで迫れるザクなんて在りはしません。」という、これまた有名な台詞を吐いている。
そうであるのにスレンダーのザクの速度が世間で無視されているのは、台詞集だけ見てガンダムを語る人や俗念に流されやすい視聴者が多いからであろう。
よって「通常の」というのは、通常のザクの性能上の速度や加速度の話ではなく、ザクで敵艦に迫る場合の平均的な速度の話であろう。
敵艦に迫る際に速度を落とす理由は、迎撃ミサイルとの相対速度を下げるためであろう。ミサイルを視認した際、急いで別方向のベクトルにバーニアを噴かせても、ミサイルもザクも大きさを持っている以上、余りに接近速度が速いと当たってしまう。よって常識的な敵艦への接近速度というのは大体どのサクでも同じになり、技量の高いパイロットの場合だけ多少それより高速で接近するのであろう。
そしてニュータイプであるシャアは目視せずとも敵のミサイルの発射のタイミングを予測出来たので、三倍の速度で敵艦に迫っても平気だったのであろう。また通常のザクに乗る一般兵でもシャアの僚機に乗っている時には、シャアが直進を止めた次の瞬間に自分もそうすれば良いので、通常の三倍に近い速度で敵艦に迫れたのであろう。
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