日中対立激化で弱まる日本の軍国主義

 タイトルを見て「日中対立激化で強まる日本の軍国主義」の誤記ではないかと思われた方も多いと思う。日本国憲法第9条の改正の可能性が日に日に高まり、日中の艦が一触即発の状態になった件で日本共産党をも含む朝野が中国批判に明け暮れている現状を見れば、確かに一面では日本の軍国主義は強まっていると言えよう。
 しかし一方で実は、観方によっては日本の軍国主義は日に日に弱まってもいるのである。本日はこの視点を紹介したいと思う。
 長年日本の左派にとって、自衛隊の海外派兵は反対の対象であった。中道左派の多くは専守防衛の姿勢を目指してきたし、もう少し左に行くと自衛隊廃止が最善で専守防衛が次善という違いが出てくるものの、とにかく海外派兵をするよりは専守防衛の姿勢の方が良いという点では共通していた。
 また右派の中でも反米右派の多くは、憲法9条の改正を目指しつつも、日本軍がアメリカ軍による弱い者苛めの尖兵になる可能性に危惧を抱いていた。
 だが現在の様な日中対立が継続・激化する限りは、仮に憲法が改正されて理論上は中東等で好き放題に武力行使が出来る法体系が成立したとしても、日本軍は国防だけで精一杯となり、事実上は東アジアに釘付けにされるであろう。
 この状況は、利権のために積極的な海外派兵を目指す軍国主義者にとっては切歯扼腕の状態であり、専守防衛主義者にとっては平和の次に嬉しい状態であると言える。
 「軍靴の足音が聞こえてくる」というのは、軍隊がせいぜい己の聴覚の及ぶ範囲内で活動している証拠でもあるのだ。