今更ながら『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を観賞

 前作→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20090926/1253960775
 今更ながら『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を観賞した。この数か月間、情報を遮断するのに苦労していたので、中身の感動以上に解放感の方が大きかった。
 映画館では、本編が始まる前にジブリの『巨神兵東京に現わる』が上映された。以前、「映画版『風の谷のナウシカ』は作中世界で示された物理法則から判定して小人の世界であり、巨身兵こそが現実世界の一般人サイズなのだ」という説を読んだ事があったのだが、本作をもってその説が公式でない事が明らかになった。
 本編が始まる際には製作会社の「カラー」がギリシア語で"χαρα"と書かれていた。『エヴァンゲリオン』及び『ヱヴァンゲリヲン』が切っ掛けでギリシア語や新約聖書を学び始めた人も多いだろうと、想いを馳せた。
 前作と異なり、今作はかなりキリスト教の風味が強かった。
 いきなりお前は罪人だと定められ、その罪が先祖に由来する事が明かされ、やがて自分を愛してくれる存在が死ぬ事でその罪を引き受けてくれるというのは、非常に直接的にキリスト教の影響を受けていると言える。しかも御丁寧に髑髏の丘まで再現してみせている。これは余りにも判り易く、捻りが無さ過ぎる。これは冗談だが、もしも福音書記者達に著作権が残っていたらアウトだっただろう。
 また聖書に記述が無い説だが、一説にはキリストの血を受けた髑髏はアダムのものであったとされる。アダムである渚カヲルがキリストの役目をも果たし、その際には血が強調されるというのは、この異説を踏まえたものであると思われる。
 第13号機で世界を修正しよういう試みは、ユダが裏切ったので補欠を選んだという使徒行録の記述に基づいていると思われる。13号機が二人乗りなのは、ヨセフとマッテヤの二人から籤で補欠を選んだ故事に由来すると思われる。そう考えると、旧作では単にアダムであったカヲルは今作では一人三役をやらされた事になる。
 冬月コウゾウ碇シンジを将棋に誘いつつ、全てを利用する碇ゲンドウの企みを話したのは、ゲンドウにとって他者が駒に過ぎないという事を示唆しているのだろう。コウゾウが将棋を「打つ」ものだとしていた件は減点要素。
 綾波レイの名は『美少女戦士セーラームーン』の火野レイへのオマージュであるとされているが、今作では黒服を着て死神の鎌を持っていた。これはセーラーサターンへのオマージュであろう。「サターン」の名は葛城ミサトが合流コードとしても使っていたし、そもそもセーラーサターンの必殺技「死世界変革」からしサードインパクトに性質が似ている。
 今作は明かされない設定も多く、誰が何を企んでいるのかも良く判らなかったので、久々に旧作『エヴァンゲリオン』で味わった消化不良感を味わえた。今後徐々に周辺情報を摂取して楽しんでいく積もりである。

風の谷のナウシカ [Blu-ray]

風の谷のナウシカ [Blu-ray]

小型新約聖書 詩編つき - 新共同訳

小型新約聖書 詩編つき - 新共同訳

美少女戦士セーラームーン 全12巻完結セット (新装版) (KCデラックス)

美少女戦士セーラームーン 全12巻完結セット (新装版) (KCデラックス)