『牙狼<GARO>〜闇を照らす者〜』全話視聴計画(第16〜20話)

第16話『友 Lost』
 命令には絶対服従の魔導ホラーだが、正気は保っているので、燕邦は命令の範囲内で自由行動を行う。そして莉杏の危機を救う。皮肉にもその日の夜、莉杏は燕邦が魔導ホラーである事を知ってしまう。莉杏は燕邦に複雑な思いを抱く。
 そして流牙が燕邦を斬る直前に莉杏はそれを邪魔してしまう。甘いと言えば甘いのだが、一応一度は借りを返す場面が必要であったという事情も理解出来る。
 もう後半なのであるから、この莉杏の行動が単純に吉か凶かの一方の結果のみをもたらして欲しくはないと思っていたが、後に私の希望通りになる。
 強敵の尊士が金城憲水の秘書をしている状況を知った流牙達は、憲水が黒幕であるという確信を深め、襲撃する。しかし憲水は流牙を見ると車椅子から立ち上がって尊士を攻撃し、かなりの打撃を与える。強い!
 憲水によれば、真の黒幕は四男の金城滔星との事であった。
第17話『裏 Tousei』
 前半は金城滔星視点での総集編。今までの伏線の回収が一気に進む。裏で進行していた滔星の計画も大方明らかになる。ナレーションはリベラというサービス。
 滔星は魔導ホラーのプラントを使って牙狼を魔導ホラーにする予定であったが、魔導ホラーを斬ると牙狼の金色が増して強くなると流牙対尊士の戦いの最中に知り、しばらくは牙狼の強大化を促進していたらしい。第9話で優勢だった尊士が急に撤退したのはこのためであった。また明言はされていないが、第12話でリベラが頭脳戦でも肉弾戦でも完敗したのも、おそらくは滔星の計画通りの意図的なものであったと思われる。というのも、この話以降のリベラはやたら強いのである。
 後半から前回の話の続きが始まる。
 滔星が金城一族を粛清し、自分がその後継者となる。
 符礼は金城憲水を守りきれず、自身も負傷するが、羅号を放って敵の本拠地ビルを突き止める。
 憲水としては自己クーデターの時期を見誤ったと言える。
 流牙・哀空吏・猛竜・莉杏・符礼は全員指名手配される。戒厳令も敷かれる。
 自ら魔導ホラーを牙狼への生贄に差し出したせいか、滔星の駒となる魔導ホラーはもう尊士・リベラ・燕邦の三体しか残っていなかった。仮に牙狼を魔導ホラーに出来たとしても、戦力的にペイ出来ているのか、甚だ疑問である。
第18話『闘 War』
 符礼の負傷はまだ治らない。名門出身の魔戒騎士よりも更に高い地位にいる符礼の大怪我に対してすら、まともな薬を使えないのであるから、第6話で猛竜に薬が与えられなかった理由も、「補給が滞っているから」である可能性が高まった。
 焦った流牙達は、符礼を置いて四人だけで事件を解決しようとする。それを後からザルバに聞いた符礼は、「今戦えば負ける!」と言って傷の完治を待たずに出撃する。
 そして金城滔星もまたただの人間だと判明する。彼は優秀な人間を魔導ホラーにして様々な悪事を行っているが、魔戒騎士達は人間を殺してはならないという鉄の掟のせいで、滔星本人には手が出せない。莉杏も騎士達と同じく滔星に手が出せなかったので、どうやらこの掟は魔戒法師にも適用されるようだ。
 この、「総大将は人間」という組織は、魔戒騎士・魔戒法師にとって厄介な集団である。貴志祐介の『新世界より』は、全ての人間が意識的に他人を殺せない上に、万が一他人を殺してしまうと自動的に死んでしまうというDNA操作が行われた後の世界を描いた作品である。この世界は普段は平和なのだが、稀にこの機構を持たない突然変異の人間が現れると、誰も抵抗出来ずに多くの人々が殺されてしまうのである。滔星一味の設定は、あるいはこの作品の影響を受けているのかもしれない。
 滔星は四人を本拠地ビルの地下にあった遺跡へと案内する。ここで滔星を莉杏が追い、流牙対尊士、哀空吏対リベラ、猛竜対燕邦の戦いが始まる。
 緒戦では騎士達は案外優勢であり、符礼の発言は杞憂であったかの様な印象を受ける。だが莉杏の悲鳴に反応した流牙が余所見をして倒される。そこで滔星が最後のプラントを流牙に植え付けようとするが、猛竜が自分の右手を犠牲にしてそれを防ぐ。因みに哀空吏は残念な事に普通に負ける。
 哀空吏は猛竜を連れて逃亡に成功する。戦いでは残念だった哀空吏だが、大怪我をしていなかったので撤退という唯一の見せ場が残されていた。
 リベラ・燕邦は駆けつけた符礼に対応するために彼等を追えなかった。
 しかし流牙は完敗し、牙狼剣を失った挙句に視力まで失う。

新世界より(上) (講談社文庫)

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第19話『光 Hope』
 前回から今回冒頭までの間に、符礼はレクイエムを歌っていた少女を救出して逃亡したらしい。
 莉杏は捕まったままで、金城滔星は彼女を魔導ホラーのプラントを産む新たな魔戒法師にしようとしている。前回最後のプラントを失った際には「滔星の勢力は今後徐々に衰える一方か」と安心したものだが、まだ奥の手があったようだ。
 視力を失った流牙は何故か殺されもせず、SG1本部の独房に監禁されるだけで済んでいる。滔星が流牙を生かしておいた理由は、やがて産まれる新プラントで魔導ホラー化すれば、眼もその力で治せると思ったからであろう。
 だが流牙は諦めずに、聴覚を頼りに脱獄し、牙狼剣を拾いに行く。
 流牙より強くてソウルメタルも持てる尊士だが、床に刺さった牙狼剣が抜けない。仕方無く、複数のホラーと一緒に周辺を警備している。
 そして牙狼剣は牙狼剣に牙狼として認められた者にしか抜けないという設定が公表される。これは非常に素晴らしい設定である。『牙狼GARO>〜MAKAISENKI〜』の「第15話 同胞」で少年時代の鋼牙がソウルメタルを持てるようになった事と、『牙狼GARO>』の「第十二話 大河」で鋼牙が青年時代になって漸く牙狼剣を引きぬけた事とが、互いに矛盾しているという批判が過去には在ったが、この問題はこの公式設定によって解決した事になる。
 因みに尊士が率いていた六体のホラーの顔は、いつものゾンビ顔ではなく、陰我ホラー風の変形をしていた。力量も、三対一ならば右手を失った猛竜のみならず五体満足な哀空吏まで圧倒してしまう程。よって陰我ホラーである可能性が高いのだが、昼間から本性の一部を曝していた点が引っかかった。顔の変形程度ならば昼でも出来るのだろうか?
 流牙は牙狼剣を取り戻す。この時、本人の格闘能力や哀空吏・猛竜の助力のみならず、急にSG1が現場に来たのも、尊士とその部下の撤退の原因であった。
 この齟齬は、燕邦を自分の警護のために手元に置いてしまった滔星の失点である。だがもしも燕邦をSG1の指揮にまわしてリベラ一人に自分を警護させていた場合には、哀空吏・猛竜・符礼が再度の特攻を仕掛けてくれば、簡単に莉杏を奪回されリベラも殺されてしまうだろう。そういった事態を怖れての事と思われる。
 滔星本人はまだ気付いていないが、自らが招いた手駒不足が徐々に響いてきた。
第20話『母 Mother』
 符礼が救い出した少女は流牙の母の波奏だったと判明する。
 かつて波奏と符礼は牙狼の鎧に金色を取り戻すため、莉杏の父である魔戒法師や魔戒騎士時代の尊士と共にゼドムの腕塚で儀式を行っていたらしい。
 だが金城滔星の陰謀で、波奏は捕まって大量の魔導ホラーのプラントの母にされ、尊士は滔星の命令に従う魔導ホラーにされ、莉杏の父は殺されてしまったのである。
 滔星がただの人間でありながらこんな大陰謀に成功したのは、憲水に捨てられた母が追放された魔戒法師であったために、多くの知識を得ていたからである。
 滔星は母に「強い男になれ」と言われて育った。この発言は、文脈こそ違うものの、符礼が流牙に与えたものと同じである。こういう対比も面白い。これで流牙の本当の父親が憲水であったなら、もっと面白くなると思う。
 因みに滔星の本拠地ビルの地下にあった遺跡は「ゼドムの首塚」であり、かつて儀式が行われた「腕塚」とは別物であると判明する。
 波奏は自分の眼を永遠に犠牲にする事で流牙の視力を回復させる。こういう行動からも、本当に薬が足りないという事が判る。
 私としては視力を失って却って強くなるという魚沼宇水の様な展開を期待していたのだが、もう回復してしまった。