『NHKスペシャル 未解決事件 file.02 オウム真理教』に見られた宗教パワハラ

 少し前に『NHKスペシャル 未解決事件 file.02 オウム真理教』(http://www.nhk.or.jp/mikaiketsu/file002/index.html)という番組を見た。新たに発見されたテープを元に、教団が変質していった過程を描いたものであった。
 この番組では幾つか残念な点があったが、その中でも最大の問題を本日は告発したいと思う。
 番組制作過程の再現映像で、麻原彰晃のカリスマ性を称賛したNHKの記者に対し、上司が「入信するなら番組制作後にしてくれよ」という意味の発言をする場面があったのである。
 おそらく単なる冗談だと思ったからこそ堂々と放映したのであろうが、これは重大な人権侵害である。上司という立場を利用して、ある特定の宗教を信じるなと命じているのであるから。
 「Aという宗教を信じるな!」という呼びかけは、「A以外の何らかの世界観を信じろ!」という意味であるから、これは布教と同列に論じられるべきである。
 私的な時間に対等な一個の人間として布教をするならば、それは憲法の第20条や第21条によって保護されるべき自由であるが、逆に職場において業務命令の一環として部下に布教を行った場合、それは他人の信教の自由を侵害する行為となるのである。
 記者がアーレフ(旧オウム)に入信したからといって、必ず番組の中立性・客観性が損なわれるとは限らない。また入信の結果として番組の中立性が損なわれそうになったならば、配置替えをすればいいだけの話である。
 禁止の対象がカルトだからと思って油断していたのであろうが、反カルト運動・組織もまた、いつでもカルトに堕落する可能性を秘めているのである。
 そして、こんな人権侵害を認めていたら「恋愛に関する客観的な番組を作りたいので、制作陣は完成まで恋愛禁止!」だの、「政治に関する客観的な番組を作りたいので、制作陣は完成まで一切の政治活動禁止!」だのと、他の人権まで容易に損なわれる世の中になってしまうだろう。
 NHKは、公共放送としての自覚を持ち、コンプライアンスの尊重に努めて欲しいものである。