「「電話番号が変わった」という電話は詐欺」という標語の是非を考えた。


 「「電話番号が変わった」という電話は詐欺」という標語が書かれた幕を見つけた。行政機関がこういう標語を流布する事について、数日間色々と考えた。
 これを批判する場合、以下の論法が考えられる。
「目先の犯罪を少しでも減らしたいという気持ちは理解出来る。しかし「電話番号が変わった」という電話が必ず詐欺だとは限らない。行政機関がこの様な不正確な標語を流布した場合、電話番号が変わった事を真摯に電話で伝えようとする者に、多大な損害を与える事になる。
 またこういう大雑把な標語が流布される事を野放しにしておけば、いつか「A国人は犯罪者」という標語まで許容されてしまうかもしれない。」
 一方、擁護するならば以下の論法が考えられる。
「通常の知能の持ち主ならばこの標語を見ても、社会常識に従い、末尾に「である。」ではなく「かもしれないので気を付けろ。」と補足する筈である。
 そして知能が低い人や衰退が始まっている人に「「電話番号が変わった」という電話は詐欺かもしれないので気を付けろ。」という複雑な標語を与えても理解してもらえない。こういう人を詐欺の被害から救うには、多少不正確でも簡潔な標語を教え込むしかないのだ。
 電話番号を変えた人や変えようとしている人やマイノリティ集団に属する人が、こうした標語によって不利益や不利益の可能性に苦しむ事は承知している。しかし今は振り込め詐欺の脅威の方が激しいのであるから、我慢してもらうしかない。」
 どちらもそれぞれそこそこの説得力のある主張に仕上がったので、結局自分でも結論は出なかった。そこで件の標語の写真と私の思考の結果を提示した上で、世の中にこの標語の是非を問うという手法を採用する事にした。
 おそらく一番良いのは、簡潔でありながらしかもより正確な標語を考案して警察に教えてやる事なのだろう。だが残念な事に私にはそのための才能が無かったのである。