一橋文哉著『モンスター』(講談社・2014)の「登場人物関係図」の酷さ

 実家で発生した大事件*1の処理に追われ、余生の最大の目的であるはずの西に住む弟弟子への支援が滞りがちである。

 それでも僅かな時間を活かして、問題の関連書籍を図書館で大量に借りては読み漁っている。

 さて、金を払って一冊ずつ本を買おうとすると立ち読みの段階で駄本の大半はシャットアウトできるものだが、無料で大量に借りるとどうしても自然に駄本の割合が増える。

 そこで昔取った杵柄である知識と能力を社会に還元するためにも、このような形で出会った悪書については、時間の許す限り紹介していきたい。

 今回紹介するのは一橋文哉著『モンスター』(講談社・2014)である。

 弟弟子の抱えている問題の参考のため、「姻族とサイコパス」をテーマに大量に借りた本のうちの一冊である。

 一橋文哉氏の著作群については、概して出所の怪しい情報源に基づいて書かれているものであるという批判が強い。

 本書もその批判が当てはまる一冊だと感じたが、既に世間で言われ尽くしている件なので、この側面については深く論じない。

 私が問題視したのは冒頭の「登場人物関係図」である。

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 この写真では全体の約四分の一である猪俣家付近だけを紹介したが、ざっと見ただけでも不出来であることが分かるであろう。

 「父」だの「母」だの「姉」だのと書かれているが、それが誰にとっての属性なのかが書かれておらず、しかも統一性がない。たとえば、「母の姉」がいるとすればそれは「伯母」であるはずなのに、「姉」扱いである。「長男」の子がまた「長男」扱いである。

 また主犯格と猪俣家とのそもそもの縁は、103ページによるとこの図で「姉」と書かれた人物が主犯格の母方の伯父の妻だった事にあるのだが、この図ではまったくそれが書かれていない。仮に前段落の問題が修正されたとしても、複雑な人の縁を活用した犯罪を暴く書籍の冒頭の図としてはこれだけでも失格であろう。

 とはいえ第10ページ目で本の出来をおおよそ予見させたという点を重視すれば、ある意味で秀逸な図である。