公開セミナー「バイオエネルギーは地球を救うか」

 第35回東京大学農学部公開セミナー(http://www.a.u-tokyo.ac.jp/seminar/seminar.html)に行ってきました。
 文化の秋ならではの現象なのか単なる偶然なのかは判りませんが、今日は行きたいイベントの多い日でした。なんとこのセミナーと同じ大学の中だけでも、地域文化研究専攻主催シンポジウム・世俗化する宗教(http://ask.c.u-tokyo.ac.jp/symp2008.pdf)と「翻訳と文化横断性についての統合的研究」シンポジウム・モダニズム受容の諸相――『詩と詩論』とその周辺(http://www.lac.c.u-tokyo.ac.jp/laccolloque2.html)という二つの興味深いシンポジウムがありました。その他、行きたい学園祭等も幾つかありましたが、散々迷った末にバイオエネルギーを選んだのです。
 「参加費無料」とはいえ、優柔不断な我が内心の機会費用は相当な額に上りました。
 バイオエネルギーに関しては、希望に満ちた話と絶望的な話の両方が出回っているので、以前から興味がありました。
 講演後の感想を先に言ってしまうと、やはり結局は利点もあれば問題点もあるという立場に落ち着きました。しかしそれぞれをより深く知る事が出来たので、行っただけの意義はありました。
 三時間で学んだ事を出来れば全部ここに書きたいぐらいなのですが、流石にやめておきます。それは今後しばらくの期間、直接お会いする方に対してのみ、配布資料を片手に口頭で行います。
 以下に各講演の一番面白かった所だけを紹介します。
 まずは「バイオエタノール生産・利用をめぐる経済問題と国際情勢」。アメリカが、自国で大量生産した小麦を安く売るからと言ってメキシコ等の小規模農業を潰しておきながら、今度は卑劣にもバイオ燃料構想を打ち出して穀物の値段を上げたという話が印象的でした。ただし、現在の穀物の値段は必ずしもアメリカのせいだけではなく、投機等も原因である事もまたグラフで証明されていました。穀物の値上がりについてアメリカにどの程度責任があるかの試算は、アメリカによると3%、国際連合食糧農業機関によると20%、世界銀行によると75%だそうです。
 「バイオエタノール生産・利用のための原料作物の確保」は、農学がいかに総合的な学問であるかを再認識させられる、非常に学際色の濃いものでした。ただ、産学協同色が濃過ぎたのは個人的には難点でした。一昔前のSFが当時の「現代」を風刺するため書いた様な状況がそのまま現出されていました。
 「バイオエタノール生産技術とその周辺を巡る諸問題」、これは教授がトリックスター的な方だったので、そろそろ訪れかけていた眠気を一瞬で覚ましてくれました。話の最初に、まずいきなり「地球を救うか」というこのセミナーの主題の文言を批判したのです。この批判自体はインテリの間では既に古典的なものになっていますが、公開セミナーの様な場での再確認は非常に意義のある行為だと感じました。
 今まで参加した東京大学農学部公開セミナーに「ハズレ」はありませんでした。内容の質は高く、それでいて解りやすい講演ばかりなのです。