警察は、生きて虜囚の辱を受けられない。

 私は、もしも例えば外国人等から「自衛隊は軍隊か警察か?」と聞かれたら、マークシート等の徹底した二択であれば「軍隊」の方を選ぶであろうが、会話等であれば「発足以来徐々に軍隊としての側面が強くなっていった組織だ。現在ではどちらかと言うと軍隊だが、完全に軍隊だという訳でもない。」とでも答えるだろう。
 さて、この自衛隊を、今後更に軍隊に近付けていこうとする立場と、徐々に警察に近いものへと戻していこうとする立場との間で、当然争いがある。
 これについて、私は必ずしも前者の方が武断主義的であるとは思えない。そう決めてかかっている人の多くは、警察という組織の立場や理念を過小評価していると思う。
 『ARMS』という漫画の第七巻(旧版)の61ページ、傭兵集団に占領された町の中で、ある警察官が以下の様な発言をしている。
「…なあ、お嬢さんよ。軍隊と警察の違いがわかるかい!?軍隊は、敵軍に降伏してもいいんだ。そのための国際条約まである。だがな、警察は違うぜ。警察は決して犯罪者に降伏しちゃいけないのさ!」
 自衛隊を形式上は軍隊ではないという事にしておくというのは、工夫次第では戦陣訓の「生きて虜囚の辱を受けず」の精神の継承にも繋げられる。例えば武装して不法入国してきた犯罪者集団がいた場合、警察予備隊に発砲許可を与えて派遣し、彼等には如何に不利な局面であろうとも決して投降を許さないという訳である。
 「自衛隊員の人権のためにも、彼等が捕虜としての待遇を受けられる様、自衛隊自衛軍にすべきだ。」とか、「現代で戦陣訓の理想を守るためにも、彼等が捕虜としての待遇を受けられない様、自衛隊警察予備隊にすべきだ。」といった意見が、もう少し聞こえてきても良いと思うのである。