古本屋を愛用する私は、「右傾化」言説には賛同出来ない。しかし他の立場の人も理解出来る。例えば・・・

 前にも何度か書いたかもしれないが、私は原則として古本屋でしか本を買わない。そして行きつけの古本屋の中には、売れなくなった極めて古い本を十円位で売ってくれる店もある。
 このため、古い本を日本の平均よりは読んでいる自信がある。
 古い本を読むと、当時「左翼」とされていた人でも、現代の価値観に照らすと極右でも驚く様な性差別・人種差別・国籍差別・学歴差別・職業差別・地域差別を、平然と書いている。それらは当時は「差別」ではなかったのだろう。
 こういったものが徐々に減ってきた事こそ、日本の誇るべき左傾化だと思うのだが、どういう訳かこれを誇る左翼もこれを憂う右翼も殆ど見た事が無いのが実情である。
 だから私は、「右傾化」言説には賛同出来ない。
 しかしまた同時に、上記の「左傾化」が見えてない人々全員を、「少しは古い本を読めよ、バーカ!」と馬鹿にする気にもなれない。
 彼等は、「社会主義が退潮した」・「自衛隊の人気が高まった」という二点だけに注目して、最後に「悔しい!」と付け加えるか「嬉しい!」と付け加えるかを巡って懸命に争っている様である。
 例えば、「大昔に日本軍によって酷い目に遭った。同じ目に遭わずに済むなら、他の面で酷い社会になっても我慢出来る!」という立場の国内外の御老人が、自衛隊の人気を右傾化・左傾化の主な指標にしてしまうのは無理の無い事である。
 「自分は健康で大卒で先祖代々日本列島の被差別地域外に居住していた日本国籍の男性の労働者です。」という属性の人にとっては、性差別・人種差別・国籍差別・学歴差別・職業差別・地域差別が弱まってきたというのは所詮他人事であり、資本家との収入の格差の拡大だけが気になってしまうのは当然であろう。
 ただし、彼等の言説の結論部分のみを鵜呑みにして「へ〜、日本は右傾化しているのか。メモメモ。今度誰かに言い触らしてみよう。」と心掛ける立場の人だけは、流石に馬鹿にする事にしている。
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