西部邁氏の死後の騒動について。

 二十年以上前から自分が死ぬ時は自殺だと主張していた西部邁氏が自殺をした。
 自分には何の驚きも無かったが、twitterなどでは「死ぬような性格に見えなかったので、きっと謀殺だ!」みたいな事を叫んでいる人がいた。
 「馬鹿な連中だなぁ!」と思ったが、念には念を入れて東京MXテレビの「西部邁ゼミナール」の最後の三週間を、録画していた知人に見せて貰った。するとやはり「死ぬ死ぬ」とばかり本人が言っていた。陰謀論者たちは予想通り馬鹿だった。
 馬鹿の中でも多少賢ぶる連中は「201X年頃から『死にたい』とか言っていた。」等とマスコミのインタビューに答えていた。前世紀から自殺したがっていた人についてこんな発言をしてしまうなんて、「私と西部氏の関係は実に表層的なものでした。」と自白しているにほぼ等しい。
 生前に大した付き合いの無かった知人が死んだ時に「関係者」ぶって小銭を稼ぐとは、実に汚らしい連中である。
 インタビューに軽々しく答える前に、ほんのちょっと調べれば西部氏に『死生論』という著作がある事ぐらい気付けただろうし、それを読んでから重厚なコメントを書く事も出来ただろうに。
 ソクラテスが二千年も前に人類に教えてくれた「無知の知」は、未だに輝きを失っていないらしい。愚かな人類には少なくとも二千年以上早過ぎた真理だったのかもしれない。
 「妻が死んだら自分も死ぬ」と言い張っていたのに一向に死ぬ気配の無い某氏は、公式サイトを含む複数の媒体で、西部氏の死と奥さんの死を結びつけて語っていた。太々し過ぎるのか、それとも流石に自分の言行不一致を反省する機会になったのかは、不明である。
 
 「こんな魑魅魍魎が跋扈する世界から引退出来て、本当におめでとうございます。」というのが私の感想である。
 私もこの世界が相当厭になってきた。

死生論 (ハルキ文庫)

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