きれいなジャイアン作戦――こうすれば石原慎太郎に勝てていたかもしれない・・・

 先に明言しておきたいのだが、以下は「こういう戦い方もあったかもしれない」という一例を後知恵で書いたものであり、他の戦い方や石原慎太郎候補に一票という選択肢を否定したものではない。ただ、かつての都民と似た状況に置かれた場合のための参考にして頂ければ嬉しい。
 最近私は、連続して辛淑玉氏の著作を否定的に紹介した(参照→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20081214/1229254954http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20090121/1232503768)。これを通じて、東京都で石原慎太郎政権が長続きしたのは、氏の様な人が下手に騒いだのも原因の一つだと、改めて確信した。相当問題のある発言をした人物でも、氏の攻撃を受けた途端、相対評価によりどうしても実際より賢く見えてしまうのである。
 そこで今回私は、氏を反面教師の素材にし、また『ドラえもん第36巻』にヒントを得て、石原都知事に勝利出来ていたかもしれない別の道を考えてみた。名付けて、「きれいなジャイアン作戦」である。
 本日は陸上自衛隊の第一師団創設記念式典で行われた有名な演説の考察を中心に据えるが、都知事の他の有名な問題発言についても工夫次第で類似の試みが可能であると思う。
 これが行われた当時は、私もこれを左の側からしか攻め込めない要塞に見立てていた。しかし左から稚拙に突撃し続けても、要塞には犯罪に怯える小市民による無限の補給がなされ続け、累々たる屍を野に晒すだけであろう。
 そこでいっその事、背後から攻めてみてはどうかと思うのである。普段は国防や治安について考えるのも汚らわしいと思っている人も、ここは我慢して保守派になったつもりで考えてみて欲しい。すると意外にもこの演説こそ「平和ボケ」である事に気付かないだろうか?
 何しろ、震災の際に騒擾が発生したら都の警察力では対応出来ないという、本来秘密にしておかなければならない弱味を、不用意に公開してしまっているのである。震災の際に蜂起すべきか否かで迷っていた連中は、この情報を得てさぞや蜂起の成功に自信を持ったであろう。元々対処が困難であった類型の犯罪を、これでますます大規模にしてしまった事になる。
 これを踏まえ、「自衛隊に協力要請をした」という事跡を、「軍国主義」呼ばわりするのではなく、徹底して弱気の発言として宣伝する。都知事、未発生の騒擾事件に早くも敗北宣言。陸上自衛隊に縋り付く。」等というのはいかがであろうか?
 ここで、相手の自主的な辞職の決断に一縷の望みを賭けているかの様な名前の「石原やめろネットワーク」ではなく、「石原打倒ネットワーク」という前向きな名前の団体を設立し、自民党、特に警察OBと連帯する。「次こそは自民党籍を持った人物を都知事に!」だの「警察力が舐められ始めるのは、貴方の勢力の減退につながりますよ!」だのと言って近づくのである。防衛関係の勢力には「このままでは、海自・空自の予算が減らされる!」と釘を刺す事で分断を図っておく。
 その後も次の都知事選まで、右派から中道左派ぐらいまでが共同で一人の候補を推せる環境を整え続ける。
 そして待望の都知事戦では、元警察官僚で自民党員の候補に「石原都知事の政策は原則として全て受け継ぐ。ただし私なら、自衛隊の手なんか借りずとも治安を維持出来る。しかも海外に出張しても豪遊しない。」と言わせる。
 元々石原都知事が好きだった人にとっては、この候補者はその美点を更に増やした、言わば「石原慎太郎・改」である。嫌いだった人の多くも、こちらの方が少しはマシと感じるであろう。
“Caesar's better parts/ Shall be crowned in Brutus.”(シェイクスピア著『ジュリアス=シーザー』第3幕第2場より)

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