山岡荘八の『徳川家康』を読破

 当時「世界一長い小説」の記録を更新したという、山岡荘八の『徳川家康』を読破した。古本屋で入手した、一冊四百円だった頃の版である。
 この小説の主題は「平和」である。そしてそれを実現するために、より広い視野を持とうと努力した者に、自然と天下人の地位が与えられるという信念が貫かれている。
 当然ながら、贅沢に耽ったり、一宗派を狂信したり、自家の繁栄のみを追求したりした人物は、それが原因で滅んでいく。しかしこの視野の狭い連中に対する著者や家康の感情は、怒りではなく哀しみである。
 低レベルな利益のために神経を磨り減らしている連中は、実際哀れだと思う。私は悟りきれていないので、現実世界にいるそういう連中を見ると、つい被害者の方への感情移入だけが先走ってしまうのだが、活字でなら現状でも神仏の視点を借りられる。
 この作品から得たものは、「今後も視野を拡げていこう」という決意と「この長い作品を読んだ」という達成感である。
 正直なところ、費用対効果を考えると、あまり他人に薦める気にはならない。お暇と意欲があればどうぞ、という程度。

徳川家康 26 立命往生の巻 (講談社文庫 や 1-26)

徳川家康 26 立命往生の巻 (講談社文庫 や 1-26)