ポルノ論争に関する雑感

 皇室典範自衛隊に関する種々の改革論に対しては、しばしば「それは日本国憲法第X条違反だ。」という反論がなされる。この反論への改革論者の対応は大きく二つに分かれる。一つは「いや、この程度では違反にならない。」というものであり、もう一つは「知っている。だから先に第X条を改正する手続きをちゃんと踏む方針だ。」というものである。
 ところがポルノ問題では、規制を推進しようとする側の中から憲法第21条を改正しようとする意見が聞こえてくる事はほとんどない。議論を深めるためには、そろそろこうした意見が出て来る方が良いのではあるまいか?
 ポルノ問題でもう一つ奇妙に思うのが、規制論者が外圧をほとんど活用出来ていない点である。
 日本のポルノ作品が流入する事で困っている外国政府からの規制の依頼は、まずその事実と内容だけが報道され、次にネット上で日本国と当該国の性犯罪の発生率が紹介されて馬鹿にされるというのが、お定まりのパターンになっている。
 思うに、「国や文化によって死刑の廃止が凶悪犯罪の増大に結びつく場合とそうでない場合がある様に、ポルノの規制が性犯罪を増大させないどころが抑制効果をもたらす外国があるのかもしれません。現にA国政府は本当に相当困っているみたいです。心ある日本の有権者には世界的視野に立った決断を期待します。」とでも主張すれば、A国から貰える外交上の対価についての議論が始まったり、外国人が出国せずに閲覧出来る環境にポルノを流出させた場合だけ処罰するという妥協案が出たりするのではなかろうか?
 インターネットがこれだけ広まった以上、表現の自由はもはや純然たる国内問題とは言えない。単純な規制か野放しかの二者択一にとらわれない、新世紀に対応した様々な知恵を期待したい。