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以下は映画の中で少々気になった点の紹介である。
シベリア南部にしか生息していない蝶が北上川上流域で発見された。そこで東京の生物学者の杉本教授は部下を二人派遣する。こうして話は始まるのだが、この蝶が大怪獣バランと何か関係があったのか、それとも単なる偶然だったのかは、最後まで謎のままである。「地球は謎だらけだ」という主張が冒頭のナレーションで語られているので、伏線を回収しなかったのは一つの手法ではあると思われる。
二人組は奥地にある「岩間部落」に到着するが、地元民は閉鎖的で会話は成立しない。ここで「婆羅陀魏山神」と書かれた石碑を発見する。この石碑の「神」の字の偏は、「しめす偏」ではなく「ころも偏」になっている。無理に庇うなら、閉鎖的過ぎて妙な異字体が横行している地域なのだと解せなくもない。
そろそろ開始五分である。この石碑の文字が醸し出す強烈なB級臭で、一気に目が覚める。
二人はその直後に死ぬ。新聞は「破羅陀巍の怒り?」という見出しで報道をする。「バラダギ」の漢字表記が石碑と違っているのは、誤報なのか、それともそう表記するのが実は多数派だという設定なのかは、不明である。
杉本研究室から主人公が、二人の記者を伴い、第二陣として岩間部落に行く。彼等が土俗的な祭の邪魔をしたり、地元の指導者の制止を無視して奥地に立ち入ったりしていると、湖から大怪獣が出現し、岩間部落は壊滅する。主人公はそれが中生代の怪獣バラン(バラノポーダー)である事を見抜く。「バラン」と「バラダギ」の発音が似ていた理由は謎である。
杉本研究室に自衛隊の一佐と三佐が訪れ、杉本教授にバランについての意見を聞く。教授は意見が何も無いと言い、バランを大都会に侵入させてはならないという、当たり前の事しか言わない。こんな馬鹿げた返事にも真面目に対応している自衛官が哀れでならなかった。
で、自衛隊が出動するのだが、戦車の内の一台の番号が「226」になっている。何らかのメッセージなのだろうか?
自衛隊とバランの戦いが始まるのだが、別段俊敏に避けている訳でもないバランの巨体相手に、弾がさっぱり当たらない。戦国時代の大砲でももう少し命中率が高いだろうと思わされた。
同行していた杉本教授は、バランに勝つには「思い切った対策」が必要だという、ほとんど役に立たない見解を表明した。
バランは海に飛び去った。
防衛庁長官を首班とする対策本部が作られると、杉本教授も識者の一人としてこれに参画する。しかし別の識者の常識に沿った見解を、バランは常識外の存在だからという曖昧な理由で貶すばかりで、長官に「何か対策は?」と聞かれても、回答は「御座いません。」であった。「思い切った対策」とやらは、どこに行ったのか?
次に航空隊が海上のバランに攻撃を仕掛ける。今度はそれなりに命中したようだが、全然効果が無い。最後に一機が神風特攻を仕掛けるが、前足で叩き落される。
海戦も行われるが、これまた陸戦の時と同じく、全然弾が当たらない。
バランは海路で東京に迫るが、事ここに至っても、何故か米軍に関する話題は一切登場しない。既に安保が破棄された近未来という設定なのかもしれない。
バランに対抗して、長官は対策本部を羽田に前進させる。なお、世の中には政治家が最前線に出撃しない事を憤る者もいるが、こういう素人の現地指導は実際には傍迷惑である場合の方が多い。
バランの上陸が直前に迫った頃になって、戦闘車両が艦から陸に揚げられる。事前にこの作業をしておかなかった理由は謎である。人間相手の戦争なら、こういう戦い方にも、陸上兵力を過小評価させて敵を誘き寄せるという意味があるかもしれないが、バランが相手では、どう考えても無意味である。
最後に、今までほとんど役に立ってこなかった杉本教授が、突如ある名案を思いついて、バランは滅びる。これで終わりである。
ナレーションのメッセージは、前述の通り、地球にはまだ謎が多いというものであるが、これが映画の真のメッセージとは思えない。
「製作年・シベリアの蝶と関係があるかもしれない怪獣が東京を目指す・自衛隊弱い・米軍不在」これらを総合的に考えると、「ソ連軍と自衛隊の実力の差は歴然。安保条約の早過ぎる破棄は危険だ。」という政治的メッセージが浮かんでこなくもない。ウィキペディアの「大怪獣バラン」の項目(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%80%AA%E7%8D%A3%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%B3・最終閲覧は西暦2010年8月31日3時10分)によると、元々はアメリカからの注文で製作が始まった作品らしいので、親米的なメッセージが込められていてもおかしくはない。
まあおそらくは単なる偶然なのだろうが・・・。