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バタリアンの恐怖は、本質的にゾンビを「倒す」事が不可能である事が挙げられる。ゾンビの頭部を破壊しても、それどころかバラバラにしても、各部位の活動が続くのである。しかも僅か一体でもゾンビを燃やすと、汚染物質が周辺地域一帯に広まり、ゾンビが大発生してしまうのである。終盤の核ミサイルすら無駄に終わってしまう。
しかも頭部が残っているゾンビの多くは、それなりに知性を残している。そうであるのに生前の仲間等をも襲うのは、死んでいる事の痛みを和らげるには、生者の脳を食べるしかないからである。
よって汚染が一定のレベルに達すると事実上手の施しようは無く、地球は遠からず半永久的な苦痛に呻く死物が徘徊し続ける死の星になってしまう事が、予測されるのである。
さて、私は最近テレビ版『うる星やつら』を見直したのだが、1982年11月17日放映の第72話「恐怖のムシ歯WARS!」が、こうしたバタリアンの特徴の一部を先取りしている事に気付いた。
この話は、他人を噛むと痛みが和らぐという設定の宇宙由来の虫歯のせいで、諸星あたるのクラスメイトが噛み合う、という内容を原作としている。そして内容を膨らませる際に、設定上の類似性の高いゾンビ映画へのオマージュを大量に取り入れている。
まず、虫歯の患者になった生徒達が、ゾンビのような呻き声をあげながら迫ってくる場面がある。そして患者の侵入を防ぐために作られたバリケードや、窓に打ち付けられた板の存在。極めつけは、校長の「伝染性宇宙虫歯菌によるこれ以上の被害を食い止めるために、2年4組を汚染地域に指定し、生徒諸共、教室を完全に封鎖した」という台詞である。
これらが原作の設定と融合し、後代のゾンビ映画に登場する諸相の先駆的要素を多く生んでいる。
特に、「ゾンビ達は知性が残存していても痛みに耐えかねてかつての仲間をも襲う」という設定は、おそらく1982年の段階では初登場であろうし、1985年のバタリアンまでも存在しなかった、奇抜なものであると思われる。もしもこれ以前のものを御存知の方がおられたら、是非とも御教え頂きたい。
また、ゾンビ化の原因が細菌等によるものという設定も、当時としては随分斬新な部類に入っていたものと思われる。
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