映画『神秘の法』を観賞!――木花開耶姫の謎

 幸福の科学の映画『神秘の法』(http://shinpi2012.com/)を観に行った。何しろ今回の敵は「タターガタ・キラー」というのだ。エル・カンターレキラーの戦いとあっては、『DEATH NOTE』好きの私としては見過ごせない。
 この映画の欠点については、これら二つの良質なブログ(http://hakaiya.com/20121008/review-45082http://sanpole.blog.fc2.com/blog-entry-69.html)が既に詳細に解説している。本日の記事はこれらとなるべく内容が被らない努力を行ったものなので、拙文だけを読んで映画を理解した気にならずにこれらの文章をも併読する事をお勧めする。
 まず気になったのは、西暦202X年を"AD202X"と表現していた点である。イエスを"dominus"と認める事は、幸福の科学の教義に反しないのだろうか?
 キラーは皇帝らしいのだが、帝国の幹部からは「陛下」ではなく「閣下」呼ばわりされている。こんな権威の無い帝位、私だったら推戴されても少なくとも五回は全力でお断りしたい。
 キラーの指令本部の外観は、どことなく東京ビッグサイトhttp://www.bigsight.jp/)に似ている。偶然か否かは不明である。
 例によって子安武人氏が演じる主人公「獅子丸翔」は、序盤で浦野という男に銃口を向けられ一度は撃ち殺されそうになるのだが、勝ち誇った浦野が延々と事情を話してくれたので、救援が間に合ったりする。
 彼を助けた僧達は「ライオンの如く獅子吼する」と、妙な重複表現を使う。
 そうこうする内に日本はキラーに占領されてしまう。
 進駐軍の他にも、制服に大きく「公安」と書いた公安警察が不満分子を弾圧する。この公安警察、最後まで悪役として頑張る。制作陣には何か公安への強い恨みがあるのだろうか?
 終盤では、世界中の人々が祈る場面がある。ドイツとかフランスとかウガンダとか日本とか、次々に祈りの現場の国名が紹介されていくのだが、何故か「中近東」とだけ書かれている場所もある。原因は謎である。
 さて、ここからが本題。私の深読みである。下衆の勘繰りの可能性もあるので注意されたい。
 幸福の科学の映画には、教団・教祖の現状を是としない反主流派がメッセージを残している可能性が高い事は、以前から指摘されている通りである(参照→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20120606/1338985921http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20120613/1339514239)。今回もそれらしきものを二つ程発見してしまったので、紹介したい。
 「シータ」という人物がシシマルに自己紹介をした際には、地球人が琴座のベガと呼ぶ星の惑星から来た事になっていた。ところがその後の会話では、その惑星をベガと呼んでいるのである。
 実は幸福の科学は、『宇宙人との対話』(幸福の科学出版・2010)で「ベガ星人」を登場させたため、多くの人々から恒星と惑星の区別もつかないのかと叩かれているのである。
 映画におけるこの露骨な混同は、ベガ星人の存在を信じきっている者への「何か変だと気付き、目覚めよ!」という思いを込めたヒントなのかもしれない。
 またこの作品には、ヒロインが二人存在する。一人は前述のシータで、シシマルと接吻もしている(その後、平和的に別離)。もう一人は「木花開耶姫」で、シシマルの才能の開花に貢献したり、敵の侵略に立ち向かったりする。
 この木花開耶姫という神は、瓊瓊杵尊の妻であり、神武天皇の曾祖母に当たる神である。こう紹介してしまうと、護国映画のヒロインとして申し分無さそうに思えてしまうかもしれない。しかし実は彼女の存在は、かなり縁起が悪いのである。
 『日本書紀』に収録された「一書」の説によると、大山祇神瓊瓊杵尊に二人の娘を奉ったとされる。だが姉の磐長姫は醜かったので、瓊瓊杵尊は妹の木花開耶姫とだけ結婚してしまったのである。磐長姫は酷く恨んで呪いの文句を吐いたとも言われる。このために、皇室(または全人類)は磐の様に長く生きる事が出来ず、木の花の様に儚く散る事が運命付けられたと言われている。外見だけで結婚相手を選ぶ事の愚かしさが、ここに語られている。
 さてここで思い起こされるのが、離婚後の大川隆法氏が『現代の法難1 愛別離苦』(幸福の科学出版・2011)で元妻を「かなり口臭の激しい人だった」等と批判した件である。そしてこの元妻が、今では教団を外部から批判しているらしいのである。
 木花開耶姫がヒロインとして登場したのは、「見た目だけが良い若い愛人を重用したら、教団は長くは持たないぞ。どんなに最初の妻が嫌いでも、後継者はその子供達から選ぶべきだ。」というメッセージを遠回しに教祖に伝えたかった人が、制作陣にいたからなのではあるまいか?

DEATH NOTE (12) (ジャンプ・コミックス)

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