近年の幸福の科学で霊言ラッシュが止まらない原因が推測出来る一冊

宗教学者から観た「幸福の科学」 (OR books)

宗教学者から観た「幸福の科学」 (OR books)

 幸福の科学という宗教団体は、教祖の大川隆法霊媒になって霊の言葉を語れるという教義を持っている。その霊は、死者である場合と生者の守護霊である場合とがある。
 勃興期にはこの「霊言」を多用していた幸福の科学であるが、その後は長年にわたって抑制していた。そして近年になってまた急に霊言ラッシュが再開されたのである。
 そして誰かの霊言をやる度に、対象となった人物についてより深い知識を持った人物から設定の甘さを指摘されるため、幸福の科学に対する世間の評判は急速に落ちている。
 慈悲深い私としても、「有名人の霊言をやればやる程ボロが出るのだから、霊言の対象は架空の神々に絞れば安全なのに、何故こんな馬鹿な真似ばかりするのだろう?大量に本を書いて売りたいなら、別に霊言本でなくても良い筈だ。ネタが無いなら、幸福実現党幹部との対談本を量産すれば、選挙の候補者の知名度の向上にもなるだろうに。」と、他人事ながら心配してやっていた。
 霊言ラッシュが始まった切っ掛けは、ある程度推測出来る。教祖がかつて教団第二位であった元妻と対立したので、二人の霊能力に差異があると会員に思い込ませる事で、脱会者の人数を極力抑えようとしたのであろう。だがこの分析だけでは、離婚問題が一段落した後もラッシュが続いている事までは説明出来ない。
 しかし私が最近になって手に入れた大川隆法著『宗教学者から観た「幸福の科学」』(幸福の科学出版・2014)という奇書の中には、この謎を解く鍵があったのである。
 第一章は、島薗進氏の守護霊が召喚され大川隆法氏の口を借りて幹部を相手に喋ったという設定の内容である。
 この60ページで「島薗進守護霊」氏は、「ただ(幸福の科学に対しても)やってきてるものの、それは悪口を言う場合もありますけれども、「霊言集、霊言を否定した人は、いまだに一人もいない。裁判を争うような人でも、それは否定していない」っていうところ、これは、やっぱり、すごいことだと思いますね。」と言っている。
 これを読む限り、教祖には「幸福の科学を批判している人がいる」という情報は届いているものの、「霊言が多くの人から馬鹿にされている」という情報は届けられていない様である。何らかの理由で幹部・側近達が霊言批判の情報だけは排除しているのだと思われる。
 つまり外部から見ると苦手分野にこだわって悪戦苦闘している行為が、教祖視点では寧ろ得意分野に特化して快進撃をしているかの様に見えているのだろう。
 こうなると余り嘲笑する気にはなれない。私が教祖でも、その様な情報操作をされれば、その情報を基に戦略を組み、おそらく大川氏と同じ行動をしたであろう。私どころかあの釈迦ですら、有名な「四門出遊」の故事の直前までは、父による情報操作によって後年の悟りとは程遠い状態に置かれていたのである。