大川隆法著『ジョーズに勝った尖閣男』(幸福の科学出版・2012)

ジョーズに勝った尖閣男―トクマとの政治対談 (OR books)

ジョーズに勝った尖閣男―トクマとの政治対談 (OR books)

 幸福の科学の某支部の前を通りかかった所、こんな本が無料で配布されていたので拾ってあげた。私に対して布施をすると大変な功徳になるので、この支部の人々は色々な意味で幸いである。
 それにしても凄い題名である。ある程度誇大である事は著者名から容易に想像はつくが、それでも『サンゲリア』程度の善戦は見せてくれそうな気がする。
 そう思って本文を読み始めると、いきなり1ページ目で最初のガッカリが待っている。トクマという男が「何万匹のサメ(原文傍点)が泳いでいる中を、左手で海水をかいて、尖閣諸島魚釣島に上陸した男である。」と紹介されているのだ。どうやら戦わずに泳ぎ切った事を、自分ルールで「勝った」事にしてしまったらしい。
 それにしても船から島までの直線距離の間に何万匹ものサメが居た筈がない。この「何万匹」とやらは何を指すのだろうか?
 そう思って読み進めると、52ページで二度目のガッカリが待っている。トクマが「あとで船長が、「おまえら、よく泳いだなあ。あそこにはイタチザメが何万匹もいるんだぞ」と言っていましたので、」と言っているのである。どうやら実際には鮫を見すらしなかったらしいのだ。
 その他、おかしな箇所を幾つか拾っておく。
 28ページ、著者とトクマが「シナ」を「正式な名称」であるという合意をしている。これが例えば「正確な名称」とでもしていれば、それはそれで一つの立場だと言える。しかし「正式な名称」となると、常識的に考えて「中華人民共和国」のみが正しいだろう。
 181ページには、「日本は、二十年以上にわたり、途上国に対するODA(政府開発援助)として、中国に六兆円から八兆円程度のお金を援助し続けています。」とある。しかし外務省ホームページのODAに関する「広報・資料」の「報告書・資料」のページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/kuni/11_databook/index.html)から見られる「中国」の「表−4 我が国の年度別・援助形態別実績」によると、2010年までの円借款・無償資金協力・技術協力を全部合わせても、四兆円弱程度である(最終閲覧日時は西暦2012年11月24日23時14分)。
サンゲリア パーフェクト・コレクション [DVD]

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