- 作者: 田母神俊雄
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2011/07/16
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この本では、原発事故が起きた地域の住民が移住を強制された事について、「政府によって強制連行されているだけだ。」(35ページ)だの「これはまさに菅総理による平成の強制連行である。」だのと評している。
最近では第二次世界大戦中の朝鮮半島における徴用を「強制連行」と表現するのは不適切ではないかという声が主に保守派から聞こえてくるが、著者のこうした表現はこの運動の阻害要因となり続けるであろう。読者の中には「この程度の強制退去ですら「強制連行」と表現すべきであるのならば、戦時徴用もまた当然に「強制連行」という表現が適切だ」と感じた者も多かったと思われるからだ。
この件については、37ページでも「いまの政府のやり方は、まるで平成のアウシュビッツ強制移住だ。」という過激な記述がある。
アウシュビッツにしか住んではいけないという強制と、避難区域以外のどこかに住めという強制とでは、移動の方向性の時点でまるで違っている。強制の最終目的も全く違っている事は言うまでもない。
百歩譲って日本史に疎い外国人が書いた本であるならば仕方がないかもしれないが、日本人ならばもう少し似た事例を日本史から引っ張ってきて、せめて「平成の所払い」や「平成の保安条例」等と書いて欲しかったものである。
日本政府のやる事為す事を無理にナチスの所業に喩えるというのは、一般に左派のそのまた一部の劣悪な分子によるものだという認識がある。しかし保守派が政権から失陥している時期には、三流右派にもこうした傾向が発生するのである。これが私がこの本から学んだ事の大半であった。
「武田信玄の軍団はナチスのラストバタリオンだ」(文庫版『陋巷に在り11 顔の巻』あとがき(というか付録)より)
- 作者: 酒見賢一
- 出版社/メーカー: 新潮社
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