『BLASSREITER』(ブラスレイター)全話視聴計画(第1・2話)

 私が『魔法少女まどか☆マギカ』を視聴した事を公言していると(参照→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20120618/1340029406)、それを聞いたある人が同じく虚淵玄氏が関わったアニメとして『BLASSREITER』(ブラスレイター)という作品を紹介し、貸してくれた。本日から徐々に内容を紹介していく。
 なお借りたディスクは北米版であったので、表記等については公式サイト(http://www.blassreiter.jp/index.html)の情報に大いに依拠する事になった。

ブラスレイター VOL.1 [DVD]

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第1話 絶望の始まり
 オートレースの大会の場面から話は始まった。題名の影響もあって、レースのアニメなのかと一瞬思い込まされた。
 しかし試合中に近所の救急車の中の死体が金属と融合して変形し、人を襲い始める。周囲の人々は驚きつつもその動く死体を「デモアニアック」と呼び、しかるべき部署に通報を行う。こういう現象がこの世界では半ば日常化している事が判る。
 デモニアックはレースに乱入し、選手を含む関係者を次々に殺していく。その直後に謎の鎧の人物が登場してデモニアックの上半身と下半身を分断するが、デモニアックの上半身は即座にオートバイと融合してより効率的に殺戮を続ける。
 しかしチャンピオンのゲルトだけは、超人的な回避能力で攻撃を避け続け、下半身不随程度の被害で済む。
 ゲルトはレースに出場出来ない体になった事を嘆き、絶望する。かつての後輩で現在では対デモニアック部隊「XAT」に所属するヘルマンに励まされて、一度は立ち直ろうとするが、所属チームのメンバー達も恋人であったジルも、急に態度を変えて彼から去っていく。そして絶望の果てに、謎の科学者から与えられた幻覚・激痛・死の可能性といった副作用だらけの未認可の薬をゲルトが飲んでしまった事が示唆される。
 その頃ヘルマンたちXATは、別のデモニアックに苦戦していた。死体が変化した存在であるにも関わらず、監視中は延々と擬態していたり、人質を活用して絶体絶命の窮地を乗り越えようとしたりと、デモニアックにはかなりの知性が感じられる。
 薬を飲んだゲルトは、前半に出てきた青い鎧の人物同様に鎧を纏う能力を身に付けたらしく、いきなりその現場に乗り込み、デモニアックを瞬殺する。そしてその様子はマスコミによって全国報道され、ゲルトは再び英雄となる。
 ここで第1話は終わる。ここで私が普通に予測した以後の展開は、変身能力を身に付けたゲルトが、先輩である謎の青い鎧の人物と協力して、デモニアックを倒していくというものであった。
 北米版のスタッフロールでも、ゲルトとその声優は登場人物の筆頭に挙げられていた。
 しかしこれらのゲルト視点の強調は、実は誤誘導であったのである。「志筑仁美」で一度騙されているのに、私はまたしても序盤の偽の焦点に引き寄せられてしまったのである。詳しくは、以下の話の感想で語っていく。
 なお、この北米版のスタッフロールでは、英語吹き替え版の声優の紹介の後に、元々の日本の声優も紹介されている。
 ここで面白い事に、字幕や吹き替え声優の紹介では"Igor"という綴りだった筈の登場人物が、日本語版の声優の紹介では"Ego"と表記されていた。スタッフ間の連絡の不統一によるものであろう。
 子細に調べれば、こういったミスがもっと多く見つかったかもしれない。
 因みにこの「イーゴ」は、ゲルトの引退の御蔭で自動的にチームの主将になった事を喜んでいる人物であった。またかつてイーゴに副将の地位を奪われたヘルマンが引退を勧告される回想シーンでも、馬鹿正直ではイーゴに勝てないというのが主な理由とされていた。よってイーゴは元々人間の「エゴイズム」を象徴するキャラクターだったのであろう。だから"Ego"は寧ろ「語源」に近いのかもしれない。
第2話 栄誉の対価
 今回からオープニングの映像が入った。ここでもやはりゲルトが中心人物である。青い鎧の先輩格は、敢えて二番手として登場している。
 そしてこの青い鎧のライダーの人間態が、第1話から登場してゲルトを監視していた謎の黒髪の男性である事も、オープニングの内容から判明する。
 やはりゲルトこそ主役という印象が強調されるが、オープニングの最後でゲルトと青い鎧の男が戦っているので、一抹の不安を感じさせられる。
 今回は冒頭で二体のデモニアックが登場する。デモニアックになったのは第1話のレース場でデモニアックに殺された死人の内の二人である。
 なおデモニアックに殺された者の一部は48時間以内にデモニアックになるという設定なのだが、今回の二体は48時間以上経過してから変化したらしい。そしてその原因は明かされないまま終わる。
 余談になるが、「生命が金属と融合する現象が次々と感染していく」という設定は、諸星大二郎の「生物都市」の影響が強いかと思われる。
 二体の内一体はXATが倒し、もう一体は本来は彼の監視役だったヘルマンが連れてきたゲルトに倒される。
 よってXATとゲルトの戦功は半々であり、またXAT隊員ヘルマンによる案内がなければそもそもゲルトは活躍すら出来なかったかもしれないのであるが、ゲルトの派手な活躍ばかりがマスコミに撮影されたため、世論は一気にゲルトの支持に向かう。XATがまるで役立たずのように民衆から見做されている場面も描かれる。
 この不自然な栄光の中、元恋人からも再会したいとの連絡が届く。恋人に再会するため、ゲルトは収容されていた軍の病院を抜け出す。
 ゲルトが夜道をバイクで走る場面では、今までは登場しなかったホームレスが登場している。これは作中における架空の近未来のドイツ社会の「負」の側面が初めて描かれた場面であり、こここそが物語が暗転していく瞬間であったと思われる。
 ジル邸に近付いたゲルトは、ジルの本当の恋人がマネージャーのマシューであり、自分が金のために利用され続けていた事を、二人の会話から知ってしまう。
 余談だが、「マシュー」というイギリス系の名前の人物がオーナーとの人脈を盾に幅を利かせているという事は、ゲルトが所属していたチームは外資系であると思われる。
 逆上して変身してジルを殺そうとしたゲルトだが、監視役であるヘルマンとその同僚であるアマンダが乗り込んできたので、逃亡する。
 その後、例の青い鎧の青年がゲルトとバイクを並進させながら「お前も堕ちる気か?」と聞きつつ、ゲルトを攻撃する。この台詞から、ゲルトやこの青年のように金属の装甲を纏えるようになった人間の一部が堕落した姿こそがデモニアックなのではないかと、私は予測した。
 ヘルマン・アマンダの妨害によりゲルトを取り逃がした青年は、「あれで救ったつもりか?」とアマンダに捨て台詞を残して去る。
 ゲルトはその後、崖から転落して大爆発を起こしてしまう。
 ここで第2話は終わる。かなり予想外の展開であったが、この程度はまだまだ「超展開」の名に値しない事を、私は思い知らされていくのである。
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