後半を食わず嫌いしていた『美少女戦士セーラームーン セーラースターズ』を視聴して感動。

美少女戦士セーラームーンセーラースターズ DVD-COLLECTION VOL.1(期間限定生産)【DVD】

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 かつて私は、『美少女戦士セーラームーン セーラースターズ』の視聴を中盤で止めてしまっていた。セーラー戦士が更に三人も増えて一人一人を追うのが面倒になってきたのと、タキシード仮面が途中から全然出なくなったのが、止めた主な理由であった。あと、長年守ってきたオープニングテーマを突然変えたのも、悪しき商業主義という気がしたのである。
 しかし、最近どうしても見ておかなければならない事情が生じ、仕方なく視始めた。すると非常に感銘を受けてしまったのである。
 今迄一緒に居るのが当然だと思っていたた恋人が突如姿を消す。その恋人の事ばかり考えてしまい、集中力も低下する。言い寄ってくる別の人間も登場するが、それが慰めよりも「自分は今、社会的に独り身なのである」と再認識させられるという更なる負の効果をもたらす。
 こういう月野うさぎの精神状態に感情移入できるようになったのは、私が他の多くの作品を鑑賞し、自身もまた人生の酸いも甘いも味わった後だからなのであろう。
 だから、「あの時、途中で止めて損をした」という思いもあれば、「この年齢になってから本格的に鑑賞して良かった」という思いもある。
 新しい主題歌が歌っている内容も、この精神状態についてであると、今更気付かされた。
 実はシリーズ史上最もタキシード仮面の存在が大きな影響力を持っていたのは、彼がほとんど登場しないこのシーズンであったのである。
 そして最後の大団円で、名曲『ムーンライト伝説』が再び流され、たまっていた苦しみが消え去り、元の人間関係が戻ってくる。この緻密に計算された筋書きに、とことん感動させられた。
 他にも、わざわざ尖兵を使わなくても十分過ぎる程に強い筈のラスボスが、敢えて原作を無視して前作のボスを復活させたという流れも、かつては「無理矢理だな」とだけ思ったのだが、最後まで視聴すると実に合理的な行動だったという事が判った。
 つまり、人生経験を積んだ上で一気に全話視聴してこそ、その価値が判る作品であった。
 子供向けの毎週一話完結型の番組としてこれを製作したのは商業主義的には悲劇であったかもしれないが、やはり名作が世に残った事は祝賀すべきであろう。
ムーンライト伝説【通常盤】

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