安保法案は本当に中国にとって脅威なのだろうか?

 安保法案に対し、中国は強く反対をしてきた。
 そのため、法案賛成派はこの事実をもって、法案が対中防衛に役立つと喧伝してきた。
 法案反対派の中にも「総じて日本にとって損な法案であり、ペイは出来ないものの、一応対中防衛の役には立つのだろう」ぐらいに考えている人は多いと思われる。
 だが、中東やアフリカに自衛隊が派遣される事で却って本土の防衛能力が低下する事を、不安視する考え方もある。
 そしてもしそうなったら、中国としては逆に安保法案に助けられた事になる。それを狙って反対するふりをして見せただけという可能性も疑うべきだ。
 この問題に限らず、「X法案怖い!反対!」と大声で言っている者が本当にその法案の不成立を願っていると、単純に考えるのは止めた方がいいだろう。そうした単純な思考法ばかりでは、選挙の際に選択肢を見誤るのみならず、個人としても謀略に騙され続ける人生が待っている。
 『史記』の田単列伝には、以下の様な面白い話が載っている。
 かつて斉国が燕国の名将楽毅に滅ぼされそうになった時、斉の名将田単は「楽毅以外の将軍が派遣されてくる事を斉は怖れている」という噂を流して燕に楽毅を更迭させた。しかも田単は新しくやってきた無能な将軍に対しても「こういう作戦を採用される事を斉は怖れている」という噂を流して失敗を誘発させたのである。
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史記列伝 全5冊 (岩波文庫)

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