【ネタバレ大注意】『牙狼<GARO>媚空』



 公開中の映画を紹介する時は題名に約一ヶ月間「ネタバレ注意」と書いてきた私だが、今回の記事は東京国際映画祭において一般公開に先駆けて視聴した映画の感想なので、「ネタバレ大注意」と書く事にした。
 更に念のため、記事の内容も抽象的な文章が大半を占めるよう心掛けた。
 年末になったら、題名の警告を消し、具体的な内容に踏み込んだ文章を追記する予定である。
 
 長年『牙狼』シリーズを応援してきた私だが、やはり一番好きなのは第一作の雰囲気である。そしてそんな私には、続編のそのまたスピンオフである本作が、意外にも初代の雰囲気に最も近い作品だと感じられた。
 最大の理由は、媚空の性格と立場が、第一作の頃の冴島鋼牙と非常に似通っているからである。理解者が少ない状態において、理解を求める事も無く、無表情のまま淡々と敵を狩っていく。
 ただし媚空は迷いが無い訳ではない。一人でいる時、今迄倒した敵の怨念に耳を傾けているという場面も描かれていた。こういう点では、鋼牙の言葉を借りれば「ちょっと前の誰かさん」とは一味違っている。
 その後の映画の中でも、腹の中まで純粋な人間は却って「闇斬」に向かないという設定が強調されていた。
 もう一つの理由は、ホラー映画の王道的な展開が随所に見られた事である。久々に牙狼シリーズから恐怖感を得る事が出来た。
 脚本については、伏線の使い方が見事だったと思う。例えば、擦れた視聴者の多くに「これはこういう目的のための軽い戦いだ。」と思い込ませておいて、実はその戦いに別の意味が付与されていた事が後で判明したりしていた。
 その他にも感心した点としては、モノクロの使い方が見事だったという事を強調しておきたい。
 自分としては100点をあげても良い映画だったと思う。
 ただし、それは東京国際映画祭において、大スクリーンで英語の字幕付きで視たからだという可能性もある。
 音声だけでは意味のよく判らない初出の用語が、あの場では英語の字幕の御陰で如何なる漢字を使っていて如何なる意味を持っているかが、瞬時に判る仕組みになっていた。
 迫力の劣る自宅のテレビを用い、字幕無しでこの映画に出会っていたならば、また別の感想を持った可能性もある。
 ラストシーンは続編を匂わせる雰囲気になっていたので、待望してみる。
 
 映画終了後のスタッフ挨拶では、同時通訳者の苦労がしのばれた。例えば、日本の映画界の「ヒロイン」という言葉には、「女性主人公」という意味の他に「脇役女性筆頭」という意味もある。よって後者の意味でこの単語が使われた際に、瞬時に前者と区別して、上手に意訳しなければならない。そういう場面があったので、「御苦労様」と思った。