憲法第九十六条の様々な改正案の中でもあまり見かけない類型の案を提示してみた。

 憲法第九十六条の改正案は、大別すると「改憲を今より困難にしよう」と「改憲を今より容易にしよう」の二種に分けられる。
 だが私は、二種に簡単に分けられる事自体を問題視している。
 たとえば、「第A〜B条は各議院の総議員の四分の三以上の賛成が必要であり、それ以外は二分の一以上でいい」等、ある部分は現状より硬性化しある部分は現状より軟性化するという改正案があっても良いのではなかろうか?
 そして、「硬性化だけしたい」とか「軟性化だけしたい」とかいう人たちも、条文間の硬度に差異を設けるという発想を取り入れてみてはどうだろうか?
 外国の憲法の中には、「この部分だけは永久に変えられない(変わったとしたら、それは法学上の革命を意味する)」などの条項を持つものもある。それは極端な例だとしても、条文間の価値の差を九十六条に反映させるというのは、決しておかしな事ではないと思うのである。
 知識人には第十三条こそ一番大切な条文だとする人が多いであろうし、保守派には第二条を守り抜きたい人が多いであろうし、革新派には第九条を守り抜きたい人が多いであろう。
 そうした諸価値をめぐる闘争を、第九十六条というフィールドで行ってみては如何であろうか?