知識欲・食欲の低下

 昔の自分は知識欲に苦しんでいた。その知識欲は名誉欲と密接に絡んでいた。「そんな事も知らないの?」と言われる回数を減らしたかったのだ。
 しかし三年ぐらい前から、突然これが消えた。なんとなく「もういいや」と思ってしまったのである。
 これで一気にヒマになった。
 
 昔から全部見ていた『機動戦士ガンダム』も追い駆けるのををやめた。
 決意してやめたのではなく、急に見たくなくなったのだ。どうやら私はこのシリーズの知識を蓄えたくて追い駆けていたようだ。知識欲が消えると、見たいという気がしなくなった。
 
 蔵書も、不必要なものは全部捨ててしまった。「よくもまあこんな本を持っていたものだ」と呆れるものばかりだった。
 大半が古本屋で一山単位で買ってきたものであるから、損害はほぼゼロである。もったいないという気分にはならなかった。
 部屋は一気に広くなった。
 
 そして二週間前から食欲が低下し始めた。不思議な程食欲が減った。
 食費も減り、食事を作る時間も減り、ダイエットのための運動の時間も減った。また一気にヒマになりそうである。
 
 そのヒマを何に使うかで、今後の人生が変わりそうである。
 幸いにも、「知識を排斥したい」という逆の欲求はわいてこないので、英単語を覚えたりすることの障害にはなっていない。
 
 それにしても、振り返ってみると長年実に無駄な時間を費やしたものだと思う。
 ただし、我慢をしていたら今でも欲深かっただろうと思う。