『絶狼<ZERO>-DRAGON BLOOD-』全話視聴計画(第8〜13話)

第8話「写真」
 カゴメの葬儀の後、零は現場の判断で竜の卵の破壊する事も考えるが、烈花は一応元老院の指示を聞きに行く。
 直ぐに破壊した方がいいかもしれない危険物であるならば、仮に指示を仰ぐにせよ、一応卵は元老院まで持参すべきであろうに、この時点ではそうしなかったようである。このミスは痛そうであるが、『闇を照らす者』で燕邦を一度だけ殺さなかったのと同じく、いつか却って吉と出るかもしれない。
 もう用はないのだからと町を出ていくように零はアリスに通告するが、アリスは竜の卵が気になってそれを中々承諾しない。
 そしてアリスは、出ていくための交換条件的な形で零の写真を撮りまくる。撮影の動機を聞かれると、自分でもわからないからこそ撮るという、いかにも芸術家風の回答をする。
 その後、人を幸せにしたり不幸にしたりして味を変えてから食べるというパズズ以来の美食家ホラー「ライラ」が現れ、建前としては人類全体の幸福を祈っている零の中に実はアリスを贔屓する心が芽生えている事を暴露する。
 このライラを退治して二人は別れるが、実はアリスは密かに卵を盗み出していた事が最後に判明する。
第9話「母性」
 卵から孵った竜「ループ」に母性を感じて守ろうとするアリスと、「子供達」と呼ぶ約千匹の虫を操るホラーの感性が対比される。
 一度は逃亡中のアリスとループに追いついた零たちであったが、ループの力でまた逃げられてしまう。このときループは大量の虫も焼き払っており、その力の強さが強調されていた。
 なお、零が一度変身を解除してからかなり経過してもう一度変身をする場面があるのだが、制限時間はほとんど回復していなかった。これは設定マニアには垂涎の場面であった。
第10話「伝説」
 バクラは、アリスが残していった十六枚の写真を並べると、全体として竜の姿になるという事実に気付く。実は深層心理で竜に心を奪われていたのだという考えを零達に伝える。
 これはアリスが秘密の倉庫の裏口であった古井戸へ落下したり、魔導具である籠の仕組みを知っていたかの様に躊躇せず鍵役になったり、突然裏切ったりといった超展開を、上手に説明出来る設定であると思う。
 しかしこの十六枚の写真の内、事前に紹介されていたのは僅か一枚である。バラバラに全部紹介しておいてここで一気にばらした方が視聴者を驚かす事が出来たのではないかと惜しまれる。
 ループは空腹で弱ってしまうが、アリスには適切な餌が判らない。そこへ復活したエデルが登場するが、アリスを殺すと幼い竜も死ぬ状態であるため殺せない。
 ここで二人の利害は一時的に一致し、竜の栄養である魔界由来の邪気を吸収できる泉へと向かう事になる。
 意外に竜は色々と制約の多い存在の様である。人工の竜であるグラウ竜に比べて何か一つ位は優位な点が無ければ、オキナはただの馬鹿だった事になってしまうので、早くそういう所を見せて欲しい。
 零達も花罪からの情報でその泉に駆け付け、戦いが始まった所で次回に続く。
 エデルの感情の中に人の心を見出すアリスと、そういうものをまったく見出さない零との対比が描かれた回であった。
第11話「神殿」
 邪気をループに吸収させたエデルは、サナギ状態のループを連れて本拠地に逃亡する。
 ここで設定が語られる。太古の昔、エデルとその妻の竜「ノヴァ」は、ホラーを狩って人々を救っていたものの、ある日その力を奪おうとした人類に殺されかけ、ノヴァはエデルと卵を封印して未来世界に残したらしい。
 零と烈花はエデルを追うが、アリスを追い返すのに苦労する。情が湧いたせいで、記憶を消す事に躊躇してしまったのである。
 救う対象が抽象的な「人類」から、具体性のある個人になり始めた時、それが一時的に単なる後退に見えてしまうのは、無印『牙狼』の冴島鋼牙と同じである。そしてそのままどんどん後退してしまった黒曜騎士ダリオなんてのもいた。勿論零の場合これは、更に二歩進んでより立派な人格になるための一歩の後退である。
 そういう意味で零もまた、今回はループと同じく「サナギ」になったのである。
 ここで手間取った事もあって、結局ループは成体になってしまう。しかしエデルのいいなりにはならず、むしろアリスのいいなりになる。
 自分が折角育てたループに半殺しの目に遭わされるエデルの姿は、オキナに対する行為の因果応報みたいで滑稽であった。
第12話「微笑」
 エデルはループのせいで失った腕を再生するが、烈花に再生した部位が脆いと見抜かれ、かつてカゴメが破壊した心臓をもう一度狙われて死亡する。カゴメの死が決して犬死でなかった形となる展開といい、強敵の特技がアダとなる展開といい、これは実に素晴らしい。
 アリスが竜にこだわっていたのは、竜が焼き尽くした後に再生する美しい世界を見たいからだと判明する。
 そして今までの展開は全部アリスの計画通りであった事も判明する。御月カオルの再来みたいな雰囲気を出していたが、実は龍崎駈音の再来だったという訳だ。
 そう判明しても、零はアリスを斬れない。金城滔星が切り開いた「魔戒騎士にとってメシアを超えるラスボス」という立場である。
 零との戦いで弱ったループに対し、アリスはループが「翼」を欲していると見抜き、ループの額から内部に取り込まれる。
 今までの牙狼シリーズでメシアが暗黒騎士呀を食べたりギャノンが布道シグマを食べたりする展開を見てきたので、アリスの体をエサにしてループが強化される展開を零も視聴者の大半も予測したと思われる。しかしその直後、外見はアリスをベースにしているが性格はループみたいな戦士が登場して、烈花に重傷を負わせる。
 「翼」とは、無傷の新しい肉体という移動手段を比喩的に表現したものだったようである。牙狼シリーズを長く見てきた人こそ騙され易かったであろうこの展開は、個人的には絶賛評価である。
第13話「世界」
 折角絶賛評価した展開であったが、更にどんでん返しが待っていた。実は新登場のアリス型戦士は時間稼ぎの偽者であり、本物のアリスはやはりループの中にいて、ループは翼を得ていた。直球と見せかけた変化球と見せかけた直球であった。
 零は心滅獣身を使い、さらにループの体を食らう事で鎧を竜の様に変化させ、ようやくループを大人しくさせる。
 太古の人間達がループの母ノヴァを殺そうとした理由も、竜の力を得るためであったので、竜という生き物は他者にその能力をコピーされやすいのかもしれない。
 心滅獣身は解除されるが、それは烈花が強かったからだけではなく、零自身の心も成長していたからだと感じさせる内容であった。
 死亡寸前のループからは、倒したはずのエデルが再々登場する。これも冒頭の偽アリスと同じ様なループ特製の偽者なのか、それとも一旦粉々になったエデルがループと融合して分離したのかはよく判らない。
 このエデルはやたら弱い。牙狼シリーズ恒例の、最強ボスの直後の弱い裏ボスといった感じであった。
 最後は全体的に良い雰囲気で終わった。
 そして「クレヒ」が重要人物であるという私の予想は外れた。次のシーズンでの活躍に期待である。