現実と想像の区別がつかない人を多少見直した話

※以下の記事は、個人情報保護のために事実の約20%を改変したものです。
 
 世の中には思い込みが激し過ぎて現実と想像の区別がつかない人がいるらしいことは、精神医学の素人である私でも、噂を通じて知っていた。
 ネット上ではたまにそういうキャラクターが登場するが、私はそういう連中のほぼ全員が、他者への嫌がらせのために演技としてそう演じているだけだと想定していた。なぜならば、そういう人が社会生活を送れてインターネットも使いこなせるとは、到底思えなかったからだ。
 ところがこの四月から、そういう人が私の所属する組織に入ってきた。仮に「G氏」と表記するがイニシャルではない。
 G氏が想像と現実の区別をつけられないせいで行うミスや悪事の大半は、どう見ても演技ではなく俗に言う「天然」だった。
 これは私には大きな驚きであった。一体こんな人が、今まで交通事故にも遭わずに生き延びてこられたのは何故だろうと、悩んだ。
 そしてこの半年間、G氏の流す怪情報のせいで生じる様々な齟齬に耐え続けながら観察をしていた。
 最近になって、ようやくその疑問の解決の端緒かもしれない事件が起きた。
 古参メンバー全員が「いい人だ」と評していた出入りの業者が、急に裏切るような形で、合法の範囲内でかなり酷いことを我々にしてきたのだ。
 G氏は最初からこの業者が気に入らなかったらしく、ずっと敵意を示し続けていた。これを、G氏の正体を知らない者は単なる相性の問題として片付け、知る者はいつもの妄想の暴走だと片付けていた。だがこの件に限ってはG氏の結果的勝利であったと言わざるを得ない。
 このことから考えるに、大人になっても現実と想像の区別がつかないのに辛うじて社会生活を送れているという人は、おそらく直感の能力が偶然優れていた人なのであろう。つまり、妄想のせいで100の損をする間に、直感のおかげで90の得をしているのであろう。だから、己の思考法を反省をする機会にも恵まれず、延々とそのスタイルを貫き通しているのだろう。
 以上の次第で私は、今後はネット上で現実と想像の区別のつかないキャラクターに出会っても、「また屑が可哀想な立場の人の猿真似をして掲示板を荒らすという、二重に罪深い事をしてやがる!」と決め付けず、本当にそういう能力の人である可能性も念頭に置く事にした。