サクラ大戦 帝劇宣伝部通信(6/26)

1.総論

 『サクラ大戦』シリーズは、西暦1996年に初代が発売されて以降、絶大な人気を誇りつつもそれに安住しない野心的な続編を次々に発売していったシリーズである。

 ところが何らかの事情により2005年の『V』を最後に正式な続編は作られなくなり、既存の作品のリメイクや機種移植や外伝や派生作品ばかりが発売されるようになった。そうした「準ブランク」とでもいう時期が10年以上続き、シリーズ本編の歴史の長さを越えてしまった。

 そうした中、やっとのことで『新サクラ大戦』が2019年冬に発売予定との情報が入ってきた。

 当初は疑う声も大きかったが、開発情報が小出しにされ続けるたびに、「これだけ費用を注ぎ込んだらもう引き返さないだろう」と考える人が徐々に増えていった。

 そして6月26日に、「サクラ大戦 帝劇宣伝部通信」が100分級の動画を公開した。

 これでもう疑う声はほとんどなくなった事であろう。

 本日はこの動画の感想を以下の四つの観点から書く。

2.最大の着目点

 「サクラ大戦といえば、ヒロインたち!」と言いたい所だが、今回は保留案件とする。

 これは決して天邪鬼根性ではなく公平性のためである。

 ヒロインたちの設定画は動画の32~38分辺りで全員が公開されたのだが、動画後半の実機体験部分では、その一部のみが声と身動きを披露してくれたので、今彼女たちについての感想を書くと不平等になってしまいかねないのである。

 今私が一番着目しているのは49分40秒あたりから紹介される「司馬令士」である。

 技師長として整備の責任を負っているのと同時に海軍機関学校の主席で、兵学校主席の主人公神山誠十郎の昔からの友人という設定らしい。つまり過去作における中島親方と加山雄一のポジションの後継者的存在である。

 しかし加山はあくまで兵学校次席であり、海軍におけるハンモックナンバーの影響力の強さの印象から主人公大神一郎の地位を脅かす存在という印象を持たれにくく、「組織の内側にいるライバル」という立ち位置はシリーズでは長らく不在であった。またある年度の兵学校の卒業生の上位二名という貴重な人材を、海軍が艦隊勤務以外の立場へと同時に手放すという設定も、リアリティの上で問題があった。

 今回実際にライバル的存在となるかは未知数であるが、その余地を作っただけでも、高く評価したいと思う。

 また初代のゲーム中では大神が卒業したのは「士官学校」とされるだけで、その中でも兵学校であると明言されたのはOVA『轟華絢爛』第五話を待たなければならなかったのである*1

 なので兵学校と機関学校の両方を設定の背景に使ったという点で、スタッフの海軍に関する知識に長足の進歩が窺える。そしてその知識がより優れた設定を作ったのであるから、「知は力なり」と感じた。

3.減点する予定が減点しなかった側面

 新しい絵柄については、過去作への思い入れから、発表当初は受け入れられなかった。

 ところが立体化された映像を見ると、急に何の違和感も無くなったのである。

 たまたまこの時期に私が「慣れた」からなのかもしれないが、あるいは立体化を見据えて計算された絵柄の変更だったのかもしれない。

4.最大の減点部位

 46分30秒あたりから、総司令の秘書である竜胆カオルの動画が登場していたのだが、体を妙にグラグラ・ユラユラ・クネクネ・ウネウネとさせていた。

 「立体化した人物をこんなにも自然に動かせるんだぞ!」という技術陣の意気込みが伝わってくるようであった。

 しかしここでは勤務の一環として初対面の主人公に真面目な自己紹介をした直後なのであるから、むしろまるで古臭いアニメのように無駄な身動きがないほうが、社会的には自然体なのである。

 これは発売までに修正して欲しいと思う。

サクラ大戦 特別限定版

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サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~ 通常版

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