ルソーの『社会契約論』では、最良の政体を決めていない。そんなものは各国の国情次第だとしている。ただし、政体の差異を超えて政権の善悪を客観的に評価する基準は提示している。それは、構成員の保護と反映であり、より具体的に言うと、人口が増えているか減っているかという事らしい。
良い政体だと人口が増えるというのは、墨子も言っている。
やがて近代ヨーロッパでも古代中国でも、マルサスだの韓非子だのが出てきて人口増の弊害を説いた。
そして現代、国が豊かになり続けると、多産多死→多産少死の更に次の段階があることが判明した。即ち、多産少死→少産少死→少産多死である。
こうして、人口で国家の善悪を決定するという手法はすっかり過去のものとなった。
しかし、国内の「産・死」ではなく、国際の「出・入」の方面にのみ着目すれば、今でも政体の善悪をある程度客観的に判断出来るというのが、私の発想である。すなわち、善政・悪政の真実は、命懸けの移動行為に宿る!
地方政治に関してしばしば使われる「足による投票」の発想を、国際レベルに適用してみた。これは実は、孟子が言っていることでもある。なお、足による投票仮説と孟子思想の類似性については、私の発見ではなく、長尾龍一の『古代中国思想ノート』(信山社出版・1999)から学んだものである。
以前書いたこの日記(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20080324/1206336378)に絡めて実例を挙げる。
北朝鮮から韓国へ脱走する人の数は、その逆と比べて圧倒的に多い。そして韓国から日本に密入国する人の数は、その逆と比べて圧倒的に多い。
この現実をまず押さえておけば、変な怪情報に踊らされ難いであろうし、仮に踊らされたとしても限度がある。
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