シンポジウム「海洋基本計画見直しに向けた提言〜海洋産業立国に向けた針路を〜」に行ってきました。

 海洋技術フォーラムのシンポジウム「海洋基本計画見直しに向けた提言〜海洋産業立国に向けた針路を〜」(http://blog.canpan.info/mt-forum/archive/391)に行ってきました。
 まずは来賓として海洋基本法戦略研究会座長の前原誠司氏の挨拶がありました。「来賓挨拶」というのはしばしば儀礼的なものになりがちですが、前原氏は海洋基本法の現状と課題について解りやすいプレゼンを行ってくれました。私個人としても「よく勉強しているな。」という感想を持ちましたし、その後の講演者達もしばしば前原氏の発言を引用しつつ話を進めていました。抽象的なスローガンによる扇動型の政治家が嫌いな私としては、かなり好感度が上がりました。以下、メモから主要な部分を取り出します。
 離島に外国人が不法に上陸してきた際に普通の警察に頼るという現行法は、離島が多い日本に適さないので、海上保安庁職員に逮捕等の権限を付与する改革案の話。南鳥島沖ノ鳥島に予算を付けて頑張っているという話。エネルギーは中東依存からリスク分散への移行を目指すという話。鳩山元総理の二酸化炭素排出量25%削減案は、原子力依存53%を前提にしたものなのでもう諦めたという話。海洋基本法・海洋基本計画の見直しの時期が迫ってきているので、今年は大事な年であるという話。海に流された放射能・瓦礫がどうなったかを調査して情報公開しなければ、世界の信頼は得られないという話。各省庁の縦割りの問題はまだ除去されておらず、その責任は官僚ではなく政治家にあるという話。
 次に基調講演が始まりました。講演者の一人目は、民間の立場を代表する日本プロジェクト産業協議会会長の三村明夫氏でした。
 日本の貿易赤字や世界各地の資源ナショナリズムの強大化に対し、メーカーの側でも努力するけれども、官にしか出来ない事もあるから官と手を携えていきたいという話でした。
 講演者の二人目は、海洋基本法戦略研究会顧問の武見敬三氏。議員時代に超党派の海洋会議を作った方の様です。
 超党派の会議を作っておいたから政権交代が起きても海洋政策の一貫性を保てたと誇る一方、今後どの様な更なる交代があるか判らない状態になってきたので、会議の超党派性を一層高めるべきだという話がありました。またアジア・太平洋は今後世界の経済の中心になるからこそ米中対立が高まっていくという予測が、米兵の配置が書かれた地図の補助により解り易く語られました。優先順位がつい「安全保障>資源開発>環境保全」になってしまう政治家の問題、自分の省が中心となる法律ばかり作ろうとする官僚の問題、理念法であるため具体性に限界がある海洋基本法の問題等、現状の各種の問題も語られました。
 基調講演の後はパネルディスカッションその1です。平朝彦氏・上田英之氏・飯笹幸吉氏が、日本列島周辺の海底熱水鉱床のポテンシャルと、それが現状ではまだ企業の食指をそそらない理由について、それぞれの立場から語ってくれました。
 異色だったのは、加藤泰浩氏による南鳥島付近のレアアースの話でした。一隻の採掘船で日本の年間のレアアース消費量の10%が賄えるとか。しかも採掘の際に出た泥で南鳥島を固められるという、一石(一隻?)数鳥の計画の話でした。
 パネルディスカッションその2は、湯原哲夫氏・小野芳清氏・武見敬三氏・浦環氏・尾崎雅彦氏・高島正之氏によるものでした。かつては一番進んでいた日本の海洋開発の研究・計画が、現在では諸外国に非常に後れをとってしまった、という話が中心でした。その原因については誰もが口を閉ざしていました。エネルギー関連の予算を原子力に注ぎ込み過ぎた事は明らかな原因の一つだと私は思うのですが、如何なものでしょうか?
 異色だったのは浦氏で、東京大学で海洋教育に携わる教育者の立場からの話でした。そして東京大学海洋アライアンス編『海の大国』(小学館・2011)という書籍を盛んに宣伝していました。
 この本は私も読んだ事があります。10〜13ページの理系の教授によって書かれた記事が、「15世紀ヨーロッパにおける大航海時代の始まりは、オスマントルコ帝国により、東方諸国との交易陸路を封じられたことに原因があるとされる。こうして人類は海に進出したが、」という余りに時代遅れなヨーロッパ中心主義史観で始まっている点や、39ページに「アメリカの研究者・ディケンズもほぼ同じ時期に松本教授と同じ説を唱え、」という、誰がその学説の先唱者であるかがぼかされた文がある点等、若干の問題点がある本です。しかし海洋に関する様々な分野の最先端の研究に触れられるので、一読の価値はあると思われます。
 講演の後は池袋の映画館に行って、『牙狼GARO>〜MAKAISENKI〜』の先行劇場公開を鑑賞しました。
 牙狼の最終回の内容の「前ばらし」の記事も書きたかったのですが、一応時系列に従って「前原氏」の記事をこうして先に書きました。

海の大国ニッポン

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