達哉君の早朝トレーニング

 早起きをした達哉君がジョギングをしていると、核兵器屋のおじさんが町の写真を盛んに撮っていました。
「おはよう、核兵器屋のおじさん。さては僕の町を火の海にする下準備をしているね。やめてもらえないかなぁ?」
「おはよう、達哉君。この町は君の町ではなく、皆の町なんだよ。あと、職業差別をしているとロクな大人になれないよ。」
「未来が無くなるよりましさぁ!」
「おじさんはそう主張する子供を何人も見てきたんだよ。彼等は皆、生きる価値の無い大人になってからやっと悔やんだものさ。若い内に死んでおけば良かったってね。」
 達哉君は血を吐きながら走り続けました。すると交番があったので、駆け込みました。
「お巡りさん、大変なんだ。核兵器屋のおじさんが写真を撮り過ぎて死にそうなんだよ。」
「そういう話は病院に持ち込みなさい。」
「ここは社会の病理を治す病院だろう?それならば個人の病理を治すのはもっと容易いじゃないか。」
「治せるか治せないかの問題じゃないんだ。治してはならないんだ。」
「じゃあ病院に電話するから、電話貸してよ。」
「やれやれ、最近の子供は携帯電話も持ってないのかい?この電話は私の物ではなくて皆の物なんだよ。畏れ多くも天皇陛下から御預かりしたこの電話を、私の独断で貸せるわけがないだろう。死んでも離さないぞぅ。」
 達哉君は仕方が無いので走って病院に向かいました。そしてその方が自分の健康にも良いだろうと、無理に合理化しました。
「ようこそ少年、我が病院へ。」
「交番のお巡りさんの頭がおかしくて大変なんだ。すぐ治してよ。」
「ここは精神科だ。精神は治せても頭部は治せないね。出直してきなさい。何故そう勧めるかって?家との往復が終わる頃には事態が君に有利に運ばないとも限らないからさ。」
 達哉君が家に向かおうとすると、タクシーが近付いてきました。
「タクシーの運転手のおじさん、全力で僕の家まで行って、その後でここまで戻ってきておくれよ。お医者さんが心からそれを望んでいるんだ。」
「まかしておけ。今から全力で行くから、君はここで伏せていたまえ。」
 運転手さんはタクシーから降りると、全力で達哉君の家に向かいました。
 そこへ核兵器屋のおじさんが通りかかりました。
核兵器屋のおじさん、この町は狂っているよ。おじさんの力で何とかしてくれよ。」
「私はおじさんじゃなくてお兄さんだ!特に私の弟さんにとってはな。お前の町がどうなろうと知った事か!」