【桑田次郎追悼記念記事】 桜井一著・桑田次郎画『完全犯罪ゲーム』(西東社・1985)

f:id:gureneko:20201203190020j:plain

 後述する面倒な計算をする時間がなくて後回しにしすぎてしまったが、今回は桑田次郎追悼記念記事である。

 この『完全犯罪ゲーム』という作品は、運がらみの要素も強く、推理物のゲームブックとしてはつまらない部分もある。

 しかしどのページにも必ずしつこく桑田次郎の絵が掲載されているので、桑田次郎ファンとしては入手しておきたい一冊だ。

 なお文章を担当した桜井一とは後年小説家としてデビューする風間一輝の本名であるので、風間ファンにも薦めたい。

 ちなみに主人公の名前は「風間吾郎」であり、この時代から「風間」姓を気に入っていたことがわかる。

f:id:gureneko:20201203175144j:plain

 ハッピーエンドは143~146ページに掲載された四種類である。ただし146ページのエンディングだけは、友人を一人失っての勝利なので、満点とはいえない。また143のエンディングのみ三種類のルートから到着できるので、いかにも平凡な勝利という雰囲気がある。

 ちなみにバッドエンドも、刑務所に収監されるだけですむものもあれば、死んでしまうものもある。

 ランダムに選択肢を選んでいった場合、143に着く確率は13/4096(1/512 + 1/1024 + 1/4096)、144に着く確率は1/8192、145に着く確率は1/512、146に着く確率は1/8192である。合計すると11/2048の成功率の犯罪であり、相当難易度の高いゲームブックである。

 なお出口の二つある迷路を解かせて出た位置に従うしかないというページもあるので、いかに著者と相性のいい犯罪の天才でも完全犯罪を成し遂げるのは難しい。

 試みに犯罪の天才が自由選択の場面では完全にゲームオーバーを回避したと仮定した場合、143に着く確率は7/64(1/16 + 1/32 + 1/64)、144に着く確率は1/64、145に着く確率は1/16、146に着く確率は1/32である。合計すると7/32であり、これでもかなり難易度が高い。

 一直線にランダム要素の一番少ないゴールを目指した場合ですら、二度の確率50%の壁を越えなければならないので、完全犯罪の成功率は1/4である。