保守派の大半すらロシアの好戦主義を見抜けなかった日本(76年半ぶり2度目)

 最近発生したロシアのウクライナ侵攻を、何年も前から予測できていた者がいれば、何年も前から警鐘を鳴らすことで今現在一気に思想的影響力を強められたであろう。

 しかし「俺様は何年も前から警鐘を鳴らしていたぞ。その証拠がこれだ。今後はもっと俺様の主張に耳を傾けろよ!」という言説を見かけていない。私がまだ発見できていないだけでなく、本当に皆無だった可能性すらある。

 辛うじてそれに似た発言があるとすれば、せいぜい保守派の一部に見られる「私は以前から(一般論として)戦争に備えなければならないと言っていたではないか!」ぐらいのものである。

 しかしそういう保守派の大半は長年ロシアの脅威より中国の脅威ばかり説いてきたのであるから、説得力は上述の架空の発言に大きく劣る。それどころか彼らの長年の単純な中国脅威論が、日本人・日本政府・日本と関係の深い国々のロシアへの警戒心を相対的に弱めさせる一助になった疑いもある。

 思い起こせば日本人は以前もロシアの好戦主義を見抜けず大損をしたことがある。「ABCD包囲陣」だの「暴支膺懲」だの「鬼畜米英」だのといったスローガンを作って東・西・南と戦っていたら、突然日ソ中立条約を破棄されて北からの奇襲を受けたのである。

 この奇襲について「スターリンを批判するだけでは進歩がない。奇襲を受けた間抜けさ加減については自己批判をし、公正に外敵の脅威を評価する能力を身に着けて、次につなげなければならない」と私は十年以上前から警鐘を鳴らし続けてきたのであるが(参照→https://gureneko.hatenadiary.org/entry/20100728/1280315933https://gureneko.hatenadiary.org/entry/2021/02/05/064500)、文章が下手なせいかあまり影響力を持てなかった。その結果が、保守派の大半も含めた今この瞬間の日本人の「まさかロシアがウクライナにここまでやるとは思わなかった」という感想である。

 ちなみに「どの程度好戦的か?」だけでなく「どの程度民主的か?」についても、日本人は世界平均と比べて中国に厳しくロシアに甘いという傾向がある。それについても私は前に指摘した(参照→https://gureneko.hatenadiary.org/entry/2019/09/25/084717)。

 ロシアに妙な幻想を抱くというのは、日本の宿痾なのであろう。