2009-01-01から1年間の記事一覧

韓を継ぐ者

先日の日記(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20090826/1251220178)で、転封を渋って新燕王に殺された旧燕王に触れた。この旧燕王は韓広という。彼が大人しく遼東に赴任して、西で失った領土を東方への拡大で埋め合わせようという前向きな思考をしていれば…

義帝時代の封建の傾向

中華の歴史において、南方を根拠に天下を統一した人物と言えば、熊心(義帝)・朱元璋(洪武帝)・孫文・蒋介石の四人ぐらいしか思い浮かばない。しかも後三者の時代の華南が既に地理的にも生産力の観点からも既に中華世界の辺境ではなくなっていた点を考慮…

日本の右翼アニメ『一休さん』に隠された反共和国の暗号

『一休さん』は日本を代表する右翼アニメであり、厚生省中央児童福祉審議会の推薦も受けている。 普段の内容としては、第一身分に属する一休宗純と第二身分に属する蜷川新右衛門が連帯して桔梗屋の商売を邪魔する事でブルジョア革命の萌芽を摘み取ろうとする…

『まぼろし探偵』全話視聴計画(総括)

『まぼろし探偵』全話視聴計画は、約一ヶ月前に一応完結したのだが、一応全体的を通じた感想・考察等も最後に書いておきたい。 まず一番面白かったのは、同じ俳優が何度も別の役で登場している点である。明石竜二の八面六臂の大活躍は何度も強調した通りだが…

ロシア革命アニメーション

事情によりかなり報告が遅れてしまったが、少し前に渋谷で『ロシア革命アニメーション 1924-1979/ロシア・アヴァンギャルドからプロパガンダへ』(http://www.uplink.co.jp/x/log/003038.php)を観てきた。まだ上映中なので紹介しておきたい。 A−1 ソビエ…

激痛地獄

右手が内側から焼き鏝を当てられる。両足は巻き添えから逃れようとしてか、即座に直立して右手との平均距離を伸ばす事に成功。口は頼まれもしないのに右手の代弁。「犠・や・や・や・あ。」脳は偉そうに高所から託宣。「昨日の君に死ぬ勇気が無かったから、…

秦帝国のラストバタリオン

少し前に映画『ハムナプトラ3』を観た。 リアルな兵馬俑は実は呪いで石化された本物の兵隊だったというアイディアが用いられており、終盤ではその石像軍団が復活して戦闘まで行う。これは相当新奇で面白いと思ったものである。 そして昨日、鶴間和幸著『秦…

日本よ、今こそ帝国たれ!

少し前に電車の車内広告で見たのだが、ある雑誌が北朝鮮を「帝国」呼ばわりして批判していた。 私には強烈な違和感があった。 「帝国」には、複数民族の上にある種の普遍性の高いものが君臨しているイメージがある。成立当初の北朝鮮は、スターリニズムとい…

人間・内藤勝夫

当時は強い差別の対象であった母子家庭に生まれ育った内藤少年は、偉人の伝記を読むのが好きであった。そこには、周囲の無理解の果てに、ソクラテスやキリストが刑死し、孔子が彷徨し、仏陀が自殺願望を持った、と書かれていた。内藤少年は大いに涙し、精神…

そろそろ、溜まった金を貧民救済に使う教団が出てきても良いじゃないか。

最近私は、映画『蟹工船』で原作にも無かった信仰による問題解決という発想への批判が盛り込まれているのを観た(参照→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20090716/1247753294)。そしてまた、普段から拝読しているブログ「カフェオレみたいな日記」で信仰と慈…

蜀漢正統論の形成において、劉禅の果たした役割

『三国志』の時代、蜀漢は三国の中で最も早く滅んでしまった。 しかし後代には、徐々に蜀漢こそ中国史の正統なる王朝であったという説が高まっていった。 その説の興隆の原因としては、まず大局的に見て、北方を失った南朝や南宋の知識人が自らの立場を蜀漢…

二つの『蟹工船』

以前、『蟹工船』が既に著者の意図した役割は終えているという内容の日記(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20080327/1206606500)を書いたら、その直後に空前の『蟹工船』ブームが到来し、大いに恥じ入った(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20080503/12097…

『まぼろし探偵』全話視聴計画(第34・35話・特典)

第34話 まだら蜘蛛の復讐 宮脇剛造という「鬼検事」の娘である典子が攫われる。奇しくも「鬼警部」富士登の娘と同じ名前である。 剛造が身代金を持って外出すると、宮脇亭を監視していた誘拐組織の構成員は、警察の尾行が無い事を暗号で首領に連絡する。 …

新百合ヶ丘にて

昨日、友人に誘われて昭和音楽大学で行われたコンサートに行ってきました。「室内楽の調べ〜ヘンデル没後250年に寄する〜http://www.preludio.co.jp/koenjyoho/detail.php?id=34」です。 ソプラニスタ・ハープ・オーボエ、どれも素晴らしかったです。行って…

『まぼろし探偵』全話視聴計画(第32・33話)

第32話 ダイヤの秘密 今回争奪の対象となる青ダイヤは、元々はカルカッタの寺のバラモン像に嵌められていたが盗まれ、やがてポタラ宮殿に納められ、ダライ=ラマのインド亡命に際しインドに里帰りするも、謎の魔術師に奪われた、という設定。 吉野さくらは…

夜汽車

車両の端の方で麦酒缶を片手にして意味不明な言辞を連ねていた老酔客が、不愉快な事に私の座席の方に近付いてきた。彼が吼える場所を変えたのには彼なりに理由があるのだろうが、その理由が何であれ不愉快である事に変わりは無い。 先程まで不愉快で無意味な…

「死票」という言葉が嫌い。

死票という言葉が嫌いである。 そもそも、当選した人間の名前が書かれた票だけが有意義なのだろうか? 確かに、一票差で勝敗が決まった場合や引分の後に籤で当落を決めた場合等の極めて限定的な状況では、最下位当選者の名が書かれた票全てに深い政治的・歴…

自害の余殃

三年前の今頃、恋人が自殺をした。正確には、恋人であったかもしれない知人(以下、「甲」と表記)が自殺を予告してきた。甲は自殺をする直前、私に電話をしてきたのである。 その電話の内容を簡潔に纏めると、甲は私を実は憎んでおり、憎んでいたのに付き合…

『まぼろし探偵』全話視聴計画(第29・30・31話)

第29話 妖鬼現る オープニングのテロップでは白髪鬼の俳優が「?」と表記されているが、話が始まった途端に白髪の怪人がいつもの明石竜二の笑い声を響かせながら若い女性を誘拐しているので、明石竜二演じる「前川博士」なる人物が劇中に登場するのはその…

佐藤優氏の対抗馬が現れないものか・・・

外務省を休職中の佐藤優氏は評論の世界で大いに活躍している。これが本人にとって喜ばしい感想であるかどうかは判らないが、公務員より評論家の方が氏の天職であるとも思えてくる。 ただ元実務家という立場で外交を語る人物として氏一人だけが極端に目立って…

『まぼろし探偵』全話視聴計画(第27・28話)

第27話 謎の仮面博士 御大層な題名だが、国際科学者管理委員会の日本支部長であるジョンソン=ドナルドの正体が実は国際犯罪組織「紅髑髏団」の一員だったという事の、比喩的な表現に過ぎない。 「ジョンソン=ドナルド」では姓が先で名が後になってしまう…

『まぼろし探偵』全話視聴計画(第26話)

第26話 七色真珠 日本に亡命してきたアナトリア王女が、部下のタイロン・シメノルと共に湯河原に滞在している。だが王位を狙うパスカルは、ダンカン・リュック・ビリーを率いて付近まで来ていた。 以上の七人の外国人を演じるのは全員日本人俳優である。そ…

東村山菖蒲まつり最後の日

昨日は東村山菖蒲まつりhttp://www.shoukoukai.or.jp/shoubu.kaika.htmlの最後の日でした。昼に暇が出来たので、訪れる事が出来ました。 数日前にも何度か機会が有ったのですが、雨の中の落ち着いた雰囲気の菖蒲畑を鑑賞したかったのです。 東村山駅で降りた…

毒草

十年前、毒の花に瘴気を浴びせられた。 肌は爛れ、胃は荒れ、疲れやすくなった。 知恵は消え、精神は不安定になった。 私は人間ではなくなった。 十年後、毒の花に瘴気を浴びせた。 体からも、心からも、毒は消えた。 私は人間に戻ってしまった。 しかし人間…

『まぼろし探偵』全話視聴計画(第24・25話)

第24話 ウランの秘密 神奈川県丹沢の山中が舞台。水原博士なる人物が、戦時中に同地でウランの鉱脈を発見していたという設定である。かつて水原の世話をしていた茂平老人は、水原の死後も遺児である次郎を育てていた。 ある日、そうした境遇を明かされた次…

麻疹とか百物語とか

最近こういう素晴らしいブログhttp://d.hatena.ne.jp/tikani_nemuru_M/20090514/1242242625を発見した。はてなダイアリーだった事もあり、初めて緑スターも使用してみた。 コメント欄にも書いたが、ホメオパシーという思想は、ガードナーの『奇妙な論理』と…

中道風の論説にこそ御注意――丸山眞男の『戦争責任論の盲点』の盲点

ちょっと前に友人から、当ブログが「右翼も左翼も批判している」事を褒められた。この時私は、自分がまだまだ精進が足りないと反省した。 確かに当ブログの書評で複数回批判したのは、現時点まででは一般に右翼・左翼に分類される事が多い故濤川栄太氏と辛淑…

『まぼろし探偵』全話視聴計画(第21・22・23話)

第21話 暗殺団を倒せ 冒頭、第2話でリマール王女の命を狙っていた連中の屋敷と同じ屋敷の門から自動車が出発する。話の内容も、富士進と黒星十郎が取材を通じて知り合った外国の王族の暗殺を阻止するというものである。主な舞台となる場所で偶然吉野さく…

『まぼろし探偵』全話視聴計画(第19・20話)

第19話 海王星から来た少年 この記事を書くために使用しているエムスリイエンタテインメントの盤では第19話とされているが、実際の撮影や放映は初期に行われているため、富士警部を演じる役者が天草四郎に戻っている。 海王星から来た二人の少年が「風邪…

保守派に長沼ナイキ訴訟の第一審判決の部分的再評価を提案する。

所謂長沼ナイキ事件をめぐり、1973年に札幌地裁で自衛隊を違憲とする判決が下された。これは『憲法判例百選Ⅱ[第5版]』(有斐閣・2007)の376ページでも相当否定的に紹介されており、また特に保守派からは憎悪・嘲笑・全否定の対象となっている。 しかし裁…