読書漫談

洪思翊氏は「異議のある者は申し出よ。」と本当に言ったのだろうか?

昨日、山本七平著『洪思翊中将の処刑』(文藝春秋・1986)の第一刷を読んだので、それに関して気付いた事を発表しておきたいと思う。 洪思翊氏は、朝鮮半島の平民の出でありながら大日本帝国の陸軍で中将にまで昇進した有名な人物である。洪思翊氏について検…

富野由悠季著『機動戦士Vガンダム』を読み終えた。

機動戦士Vガンダム〈1〉ウッソ・エヴィン (角川文庫)作者: 富野由悠季,美樹本晴彦出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1993/03メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (11件) を見る 富野由悠季著『機動戦士Vガンダム』を読み終えた。今…

多根清史著『教養としてのゲーム史』(筑摩書房・2011)を読んだのだが・・・

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)作者: 多根清史出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2011/08/08メディア: 新書購入: 17人 クリック: 399回この商品を含むブログ (40件) を見る 本書は、1972年の『ポン』から急速に進化していったビデオゲームの歴史を綴って…

ミクロスは本当にオーパーツか?スネ吉は本当に大天才か?

『大長編ドラえもん のび太と鉄人兵団』にはミクロスというロボットが登場する。現代人であるスネ夫の従兄のスネ吉が作った筈なのだが、二足歩行どころか飛行まで可能であり、その性能はアシモを軽く凌いでいる。 これにつき、ネット上ではスネ吉を天才とし…

『「マルクスは生きている」公開連続セミナー講演録』とその用途について

不破哲三氏の『「マルクスは生きている」公開連続セミナー講演録』(2010)というパンフレットが、去年から一部の大学で入学試験の前後に民青同盟によって大々的に配られている(参照→http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20110224/1298559485)。巻末の「民青メ…

「X学史」ではなく、「X学と史学」

本日は、安藤洋美著『確率論の黎明』(現代数学社・2007)という本を読んで考えさせられた事を、同書の紹介を兼ねて語ってみたい。 私は同書を、一応は「良書」の部類に入ると評価した。 まず、確率論史の本はルネサンス以降の歴史のみを描いたものが多いの…

『唐沢俊一検証本VOL.4』を入手

発売から一ヶ月以上経過してしまったが、『唐沢俊一検証本VOL.4』(参照→http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20101224/1293157504)を本日入手した。 今回は書き下ろしの第4章の質が非常に高かった。 去年私は検証活動に関して、「駄文を生む構造に踏み込ま…

石原慎太郎と表現規制とオリンピック

東京オリンピックの社会経済史作者: 老川慶喜出版社/メーカー: 日本経済評論社発売日: 2009/10/01メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (1件) を見る とある縁により、老川慶喜編『東京オリンピックの社会経済史』(日本経済評論社・2009)を…

石原慎太郎著『信長記』(河出書房新社・1972)

信長記 (1972年)作者: 石原慎太郎出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1972メディア: ? クリック: 3回この商品を含むブログ (1件) を見る 石原慎太郎著『信長記』(河出書房新社・1972)を読んだ。 250ページによれば、表題作である『信長記』は、西暦1971…

地獄の牛鬼の原型?

『地獄の牛鬼』という怪談がある。 「この世で最も恐ろしい怪談は『地獄の牛鬼』だ。だがその内容を知った人は恐ろしさの余り即死してしまう。」という内容の怪談である。 最近この怪談の原型かもしれない記述を、源信の『往生要集』の中に見つけた。 源信に…

『唐沢俊一検証本VOL.0』・『唐沢俊一検証本VOL.3』を入手

唐沢俊一検証本、第一巻(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20090908/1252347436)・第二巻(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20100107/1262796318)に続き、第零巻・第三巻(参照→http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20100813/1281696282)も入手し、先程読み…

今度は『竜馬がゆく』を読了――信夫左馬之助と社会契約

竜馬がゆく (新装版) 文庫 全8巻 完結セット (文春文庫)作者: 司馬遼太郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/03/13メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 38回この商品を含むブログ (27件) を見る 最近毎日異常に忙しい筈なのだが、ノートすら開けない満員…

ペリーヌとの偶然の再会

昔、『ペリーヌ物語』という題名の連続アニメーションの後半部分を再放送か何かで観た。それなりに面白かった記憶があるのだが、何が何でも再会したいという程のファンではなかったので、ネットに触れた後も特に検索するでもなく、ほとんど忘れかけていた。 …

司馬遼太郎著『翔ぶが如く』を読了

翔ぶが如く (10) (文春文庫)作者: 司馬遼太郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1980/05メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 大昔に購入した『翔ぶが如く』を読んだ。 大河ドラマにもなった作品であり、分量は文庫で全十巻と、著…

『差別と日本人』(角川書店・2009)を読んだ。

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)作者: 辛淑玉,野中広務出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 2009/06/10メディア: 新書購入: 9人 クリック: 232回この商品を含むブログ (122件) を見る 私は辛淑玉氏の著作を何冊も批判してきた。だが辛…

イギリスの国益と二人のチャーチル――マールバラの呪い

藤沢道郎著『物語 イタリアの歴史』(中央公論社・1991)の245ページにて、スペイン継承戦争に関する面白い記述を発見した。 「戦争の最終段階でフランスが窮地に追い込まれた時、英国が和平に動いたのは、ブルボン、ハプスブルク両陣営のどちらにも決定的な…

鄭飛石著『項羽と劉邦』を読んでから考えた事

小説 項羽と劉邦〈上巻〉作者: 鄭飛石,町田富男出版社/メーカー: 光文社発売日: 1997/04メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る小説 項羽と劉邦〈下巻〉作者: 鄭飛石,町田富男出版社/メーカー: 光文社発売日: 1997/04メディア: 単…

もっと海に着目しましょうよ、網野善彦先生。

網野善彦著『「日本」とは何か』(講談社・2000)の92ページに、紀淑光という参議が「日本」という国号の由来を『日本書紀』の講師に質問したという話が登場する。講師は最初は『隋書』東夷伝の「日出づる処の天子」を引用するが、この国から見れば太陽は国…

里見紝を読み始めた。まず『ひえもんとり』から。

二年程前の事だったと思うのだが、谷崎潤一郎による文学論を読んだ。その中で妙に高い頻度で「里見紝」が名指しで批判されていたのが気になった。恥ずかしながら聞いた事の無い名前であったからである。ともかく、同時代には大物として通用したものの後世に…

『唐沢俊一検証本VOL.2』を入手

以前紹介した唐沢俊一検証本(http://d.hatena.ne.jp/gureneko/20090908/1252347436)の第二巻を中野で入手してきた。 外観はkensyouhan氏の12月27日の日記(http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20091227/1261892289)の写真にある通り漆黒であったため、積み…

トルーマンの興味深い発言を偶然発見!

私の部屋には、一山単位で入手したり交換本コーナーで拾ってきた書籍が山と積んである。今晩は久々にその整理をしたのだが、その際に木村尚三郎著『近代の神話』(中央公論社・1975)という本を発見した。 木村尚三郎といえば、『作法の時代』(PHP研究所…

『MMR』に秘められた究極の暗号――青い麦

某漫画やそれを嘲弄する文章を読みすぎると、アナグラムという発想は随分怪しいものだという印象を根強く植えつけられてしまう。 しかしながら、ある種の文字の配列によって受けてしまう印象を読み手の側で意識的に分析する事は、それなりに意義のある行為だ…

孫晋泰著『朝鮮民譚集』

勉誠出版が復刊した(参照→http://www.bensey.co.jp/book/2176.html)、1930年に郷土研究社から定価3円で発行された『朝鮮民譚集』を読んだ。 これは、近代化によって失われつつあった朝鮮半島の口承文学を聞き取り調査した書籍である。収録された話に興味深…

『DEATH NOTE』礼讃――チャーチル英首相と魅上照

ずっと前に、イギリス人が「A氏はヒトラーやチャーチルと同じく全体主義者だ。」と取材に答えている本を読んだ。戦争が終わった途端にチャーチルの権力を奪った自国の歴史を誇っているイギリス人を見た事もある。 そうした個々の記憶は残ったが、彼の具体的…

『唐沢俊一検証本VOL.1』を入手

昨年の10月から、唐沢俊一検証blogというブログ(http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/)に出入りしている。題名の通り、唐沢俊一というライターの虚偽・矛盾・剽窃を検証していくという内容のブログである。これが非常に面白い。 ふとした偶然からこの検…

月光仮面に学ぶ、漫画の弊害

月光仮面〔完全版〕―正義の章―【上】 (マンガショップシリーズ 324)作者: 川内康範,桑田次郎出版社/メーカー: マンガショップ発売日: 2009/07/15メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 3回この商品を含むブログ (2件) を見る パンローリング社のマンガ…

麻疹とか百物語とか

最近こういう素晴らしいブログhttp://d.hatena.ne.jp/tikani_nemuru_M/20090514/1242242625を発見した。はてなダイアリーだった事もあり、初めて緑スターも使用してみた。 コメント欄にも書いたが、ホメオパシーという思想は、ガードナーの『奇妙な論理』と…

中道風の論説にこそ御注意――丸山眞男の『戦争責任論の盲点』の盲点

ちょっと前に友人から、当ブログが「右翼も左翼も批判している」事を褒められた。この時私は、自分がまだまだ精進が足りないと反省した。 確かに当ブログの書評で複数回批判したのは、現時点まででは一般に右翼・左翼に分類される事が多い故濤川栄太氏と辛淑…

ディストピア小説をディストピア小説だと感じられる人は幸福である。

久々にザミャーチンの『われら』を再読した。この作品は徹底的な管理社会を描いており、一般にディストピア小説に分類されている。 しかし本日私の中で、北朝鮮の貧困層は本作品にどの様な感想を抱くだろうかという思考実験が自然に始まった。そしておそらく…

【新説?】のび太とセワシには直系の血の繋がりが無いのかもしれない。

「か(書・描)かれたもの」を解釈する手法には、大きく極端に分けて、現存している状態を孤立した完成形と見做してそのものの内部を整合的に扱う手法(以下、手法A)と、対象がその状態になるまでの過程を考慮して可能性としてのそれ以外の結果と比較対照し…